イーヴル・インヴェイダーズはベルギーの若手スラッシュ/スピード・メタル・バンド。とは言ってもすでに結成10年選手、メタリカが『Master of Puppets』をリリースしたのが結成から5年後ということを考えると、彼らを「若手」と称するのは正しくないかもしれないが。それはともかく、彼らは07年、ヴォーカル、ギター担当のジョーを中心に結成された。09年に『D-emokill』というデモをカセット・テープ(!)で発表。だがその後メンバー・チェンジが相次ぎ、ジョー以外のメンバーは総入れ替えに。バンド名を冠したEPでデビューを果たしたときには、13年になっていた。
だがここから快進撃が始まる。現在ニュークリア・ブラストと双璧と言えるエクストリーム・メタル系大手レーベル、オーストリアのナパーム・レコーズとの契約を手にすると、15年にデビュー・アルバム『Pulses of Pleasure』をリリース。イーヴル・インヴェイダーズの名前は世界中のスラッシュ・メタル・ファンへと浸透していく。続く16年にはEP『イン・フォー・ザ・キル』を、さらに17年には早くもセカンド・アルバム『フィード・ミー・ヴァイオレンス』を発表。その人気は確固たるものになっていった。
イーヴル・インヴェイダーズの魅力を一言でいえば、「80年代スラッシュのバカさ完全再現」ということになるだろう。バンド名は―スラッシュ・ファンならすぐにピンとくるだろうが―カナダのスラッシュ・メタル・バンド、Razorが85年にリリースしたアルバムのタイトルからとられている。「邪悪なインヴェイダー」というバンド名自体もどうなのかと思うが、21世紀に元ネタがRazorというのもどうかしている。バンドの中心メンバー、ジョーは91年生まれ。つまりバンドが結成された07年当時、まだ10代半ばである。50のオッサンならともかく、10代半ばの若者が、しかも21世紀に、どうしたらRazorのアルバム名をバンド名にしようと思うのか。普通ならBonded by Bloodみたいに、Exodusあたりからとってくるだろう。さらに、音を聴いてみればわかるが、Razorからの影響は皆無!むしろ影響を感じさせるのは、Exodusあたりの方なのだから、まったくもって訳がわからない。ちなみにジョーのスピード・メタル初体験は、8歳のころ、Black SabbathのLPを間違えて78回転でプレイしてしまったことらしい。(本当かよ!78回転ってSPレコード用だし。)
デビュー・アルバムはスラッシュらしい力技にあふれていた一方、セカンド・アルバムではプログレッシヴ・メタルから、果てはドゥーム・メタル的要素をも取り入れる懐の深さを見せ、単なる懐古趣味に陥らない21世紀スラッシュ・メタルを提示する力量を持ったバンドだ。