アメリカ合衆国ヴァージニア州リッチモンドにて2000年に結成されたスラッシュ・メタル・バンド、ミュニシパル・ウェイスト。D.R.I.、スーサイダル・テンデンシーズ、コロージョン・オブ・コンフォーミティ、アティテュード・アジャストメント、ニュークリア・アソルト といった80〜90年代のスラッシュ/クロスオーヴァー・メタルに強い影響を受けながらも、独特の感覚でアップデートしたサウンドによって、彼らは新世代スラッシュ群の中でも際立った存在となった。
ギターのライアン・ウェイストがゴミ収集車の車体に書かれた文字からバンド名を決めたというミュニシパル・ウェイスト。彼らの最大の特徴はパンクの衝動性とメタルの技巧性が綯い交ぜとなって生み出される疾走感であろう。ほとんどの楽曲が1分から2分台のファスト・チューンばかりで、切れ味鋭いリフが立て続けに繰り出されていけば、どのアルバムもあっという間に聴き終えてしまう。単純に速い曲ばかりなのかというとそんなことはなく、巧妙に緩急がつけられており、練り込まれた楽曲に彼らが絶妙のセンスを持ったバンドであることがわかる。昨今のスラッシュ・メタル・リヴァイヴァル・ムーヴメントの火付け役となった彼らが、明らかに同世代のスラッシャー達から頭ひとつふたつ飛び出ているように感じるのは、この辺りのバランス感覚にあるのではないか。
2017年には、ミュニシパル・ウェイストのNuclear Blast移籍第2弾にして、通算6枚目のアルバム『スライム・アンド・パニッシュメント』がリリース。彼らの地元リッチモンドのBlaze of Torment Studiosで、ベーシストのランド・フィルが初めてレコーディング・エンジニアを担当した。そして、ミキシングとマスタリングを担当したのはBill Metoyer。彼はメタル・ブレイド・レコードの元副社長にして、80年代から現在に至るまで、多くの作品に様々な形で関わってきた重要人物だ。例えば、スレイヤーの『ショウ・ノー・マーシー』(1983)や『ヘル・アウェイツ』(1985)のミキシング、他にもW.A.S.P.、リジー・ボーデン、ダーク・エンジェル、トラブル、アーマード・セイント等々、挙げ出したらキリがないほど数多くの作品でエンジニアやプロデュースを担当しているUSメタル界の重鎮である。
2003年に1stフル・アルバム『WASTE 'EM ALL』リリース後にメンバーチェンジをして以来、不動のラインナップで活動してきた4人であるが、『スライム・アンド・パニッシュメント』から5人編成となった。新メンバーのギタリスト、ニック・プーロスは同郷の仲間。ライアン・ウェイストが他に参加している古き良きメタル・サウンドを追求したVoltureと、3人組スピード・メタルBatという2つのバンドでも一緒に活動している人物なので、コアなファンにはお馴染みである。他のメンバーは変わらずトニー・フォレスタ(ヴォーカル)、ランド・フィル(ベース)、デイヴ・ウィッテ(ドラムス)。変わらず安定している、確かな演奏だ。
スラッシュ・メタルとハードコア・パンクの要素を絶妙にブレンドしてきた彼ら。ややハードコア寄りの曲調となっているが、それはもしかしたら混沌とした今のアメリカの空気が反映されているのかもしれない。とはいえ、ツインギターの見せ場もしっかりと作られていたりする辺りはさすが。正統派メタルのツボも熟知している彼らの、すべての楽器が一体となって聴く者を刺激する彼らのストレートなグルーヴは、さらに進化を遂げたと言えよう。