1990年に結成され、1992年にピースヴィル・レコーズよりデビューを飾ったアナセマは、レーベル・メイトだったマイ・ダイイング・ブライドやパラダイス・ロストといったバンドとともに、1990年代のUKアンダーグラウンド・ゴシック・メタル・シーンの代表的存在として君臨した。ピースヴィルから4作のアルバムをリリース後ミュージック・フォー・ネイションズに移籍、この頃からオルタナティヴ/ポスト・ロック的なテイストを導入し、徐々にメタル色を薄めたモダンなサウンドにシフトしていく。
2004年にミュージック・フォー・ネイションズがレーベル事業を閉鎖したことにより、しばらく新作のリリースが途絶えてしまう事態となるが、その間にも断続的にツアーを行いつつ、彼らはレーベルにおもねらない活動スタイルを構築していくようになる。2008年、ポーキュパイン・トゥリーのスティーヴン・ウィルソンが主宰するKscopeから約5年ぶりとなるアルバム『Hindsight』をリリース、以降はこのKscopeから作品を精力的にリリースしている。
Kscopeからリリースされている最近の作品同様に壮麗なオーケストラをフィーチャーしたサウンドはまさにシンフォニック・プログレと言うべきもの。とはいえヴィンテージなプログレッシヴ・ロックやハード・ロックのみならず、オルタナティヴ、ポスト・ロック、エモ、シューゲイザー的な要素も融合、それらを決して甘ったるさに流されることのないメロウなメロディでまとめ上げるセンスはまさしく唯一無二といえる。また、抒情的なメロディの一方で、打ち込みを多用したインダストリアル/IDM/音響系的なテイストを大幅に導入している。そういう意味では持ち前のリリカルなサウンドを生かしながらもさらなる新境地に挑戦している点も聴きどころのひとつと言えるだろう。
2015年8〜9月には初来日公演を行い、光と影、ヘヴィネスとアンビエンスが交錯するステージで観客を魅了した。