ディム・ボルギルの結成は1993年。翌94年に『Inn i evighetens mørke』EPを発表すると、続く95年には『For all tid』で早くもアルバム・デビュー。そして96年に、クレイドル・オブ・フィルスも輩出したイギリスのCacophonous Recordsからセカンド・アルバム『Stormblåst』(96年)をリリース。翌97年にはサード・アルバム『Enthrone Darkness Triumphant』(97年)を発表するが、これはドイツのNuclear Blast Recordsから。
彼らは93年の結成以来、毎年成功への階段をかけのぼり、わずか4年で頂点のレーベルへたどり着いたのだ。このアルバムにおいて、キーボードを大々的にフィーチャしたシンフォニック・ブラック・メタルという彼らのスタイルは、1つの完成をみる。Nuclear Blast Recordsという超大手レーベルのバックアップも受け、ディム・ボルギルは一気にスターとなった。4th『Spiritual Black Dimensions』(99年)、5th『Puritanical Euphoric Misanthropia』(01年)をリリース後、03年の6th『Death Cult Armageddon』で、彼らは大きなチャレンジを成功させる。プラハ・フィルハーモニック・オーケストラとの共演である。本物のオーケストラを起用した、シンフォニック・ブラック・メタルの最終進化型とでも言うべき本作は、北米だけで15万枚以上を売り上げるという大ヒットに。以降、オーケストラとの共演は、ディム・ボルギルのお家芸となっていく。
10年の9th『Abrahadabra』でもThe Norwegian Radio Orchestraを起用。さらに11年には、そのThe Norwegian Radio Orchestraを伴い、地元オスロで一夜限りのスペシャル・ライヴを敢行。翌12年、ドイツの大型野外フェスWacken Open Airにおいても、Czech National Symphonic Orchestraとのスペシャル・ステージを披露している。さらに17年、この2つのライヴの様子を収めた映像作品『フォーセズ・オブ・ザ・ノーザン・ナイト~ライヴ・イン・オスロ 2011』がリリースされている。
そして、前作『Abrahadabra』から早8年。バンド結成25年目にあたる2018年、10枚目のアルバム『イオニアン』をリリース。ディム・ボルギルは、わりとリリース・ペースの速いバンドだ。デビュー以来、常に数年という間隔でアルバムをリリースし続けてきた彼らにとって、8年というブランクは異例中の異例。12年頃には曲作りが開始されていたが、次々と湧きあがるアイデアを、1枚のアルバムとしてまとめるのに長い時間を要してしまったのだそう。だが、待たされただけの価値はある。8年もおあずけを食らわされたファンの、膨れに膨れ上がった期待すら優に超える作品に仕上がっている。
2022年10月には、名作5thアルバム『ピュリタニカル・ユーフォリック・ミサントロピア』が、フレドリック・ノルドストロームのリミックス/リマスターで再登場! ブラック・メタル史上初めて大々的に弦楽オーケストラを導入した歴史的名盤だ。
2023年12月には、カバー曲を集めたアルバム『Inspiratio Profanus』をリリース。Venom、Bathory、Celtic Frostなど、彼らの、と言うよりもブラック・メタルというジャンル自身のルーツから、Twisted Sister、Deep Purple、Acceptといったヘヴィメタル/ハードロック・クラシック、さらにはサンフランシスコのカルト・インダストリアル・ユニット、G.G.F.H.に至るまで、幅広いアーティストを網羅した本作。Dimmu Borgirというアーティストを理解する上で、非常に重要な作品である。いずれの曲も、オリジナルのエッセンスを損なうことなく、Dimmu色に染められているのが見事。