80年代中盤にデス・メタルという新しいスタイルの音楽が登場した時、それは決してテクニカルさを売りにしたものではなかった。むしろ、デス・メタルとはカッチリとした演奏とは無縁のドロドロとした音楽だったと言っても過言ではない。だが、その後デスの方向転換やエイシスト、シニックなどの登場により、テクニックの追求がデス・メタルの命題の一つとなっていく。そんなテクニカル・デス・メタルの一つの頂点を極めたのが、このオブスキュラであろう。出身はドイツ、結成は02年。06年に『Retribution』で衝撃のアルバム・デビューを果たすが、その後リーダーでギター・ヴォーカル担当のシュテフェン・クメラー以外の全員が脱退。メンバーチェンジはオブスキュラのお家芸となっていく。09年には同じくドイツのテクニカル・デス・メタル・バンド、ネクロファジストにいたギタリスト、クリスティアン・ミュンツナーを引き入れセカンド・アルバム『Cosmogenesis』を発表。本作はアメリカの大手レーベル、リラプス・レコードからリリースされたこともあり、オブスキュラの人気はさらに大きなものになっていった。11年にはサード・アルバム『Omnivium』を奇跡的に前作と同じラインナップで発表するも、またまたシュテフェン以外のメンバーが脱退。その後もメンバーチェンジを経つつも、『Akróasis』(16年)、『Diluvium』(18年)とアルバム・リリースを重ね、その人気を不動のものとした。
その後、長年ホームとしていたリラプスを離れ、ドイツの大手ニュークリア・ブラストへと移籍。6枚目のアルバム『ア・ヴァレディクション』をリリース。前作からのメンバーチェンジもあり、名作と名高い『Cosmogenesis』〜『Omnivium』期のギタリスト、ベーシストが復帰している。
オブスキュラのスタイルはテクニカルでありながら、聞きにくさは一切感じさせない。調性やメロディがはっきりし、過度に複雑な変拍子まみれなんていうこともない。むしろメロデス・ファンにもアピールするであろう楽曲。流麗すぎるギター・ソロにも、ますます磨きがかかる。