フィンランドが生んだ大スター、ターヤ・トゥルネン。幼いころから音楽を愛し、周囲にもその才能に一目を置かれていたというターヤ。そのキャリアを決定付けたのは、サラ・ブライトマンとの出会いであった。ポップ・ミュージックをクラシカルに歌うそのスタイルに大きな感銘を受けたという彼女は、シベリウス音楽院にてソプラノ歌手としての訓練を積むことを決意。そして96年、ツォーマス・ホロパイネンらとともに、ナイトウィッシュを結成。翌97年にSpinefarm Recordsから『エンジェルズ・フォール・ファースト』をリリースする。実のところレーベルは大きな期待をしていなかったようだが、これがいきなりフィンランドのTOP40にランクインという快挙を達成。ヘヴィなギター、シンフォニックなアレンジメント、そしてターヤの美しくパワフルなソプラノ・ヴォイスという、斬新だが親しみやすいスタイルは、フィンランド国内はもちろんのこと、ヨーロッパ全土で大きな反響を呼んでいく。『オーシャンボーン』(98年)、『ウィッシュマスター』(00年)、『センチュリー・チャイルド』(02年)、『ワンス』(04年)とアルバムを重ねるごとに、その人気は上昇。『ウィッシュマスター』以降、彼女たちはフィンランドの音楽チャート1位の常連となるほどの人気を博すに至り、また『ワンス』では、ついにアメリカ市場でもブレイクを果たした。ところが05年、ナイトウィッシュのメンバーは、大きな決断を下す。公開書簡にて、ターヤに解雇を通知したのだ。
ナイトウィッシュ在籍時からソロ作品をリリースしていたターヤであるから、その後、単独でのキャリアを追求していくことに何らためらいがあったはずもない。クラシックのコンサート活動も行う傍ら、ソロとしては初アルバムとなる『Henkäys ikuisuudesta』(06年、クリスマス・アルバム)をリリース。続く07年の『My Winter Storm』では、ナイトウィッシュで培ったシンフォニック・メタル・スタイルを再び披露。自らの手で作曲も行った本作は、フィンランドの音楽チャート1位を獲得し、ターヤ人気の根強さを見せつけた。10年にリリースしたサード・アルバム『What Lies Beneath』に伴うツアーでは、フル・オーケストラを伴ったスペシャルなショウも行っている。その後も『Colours in the Dark』(13年)、『The Shadow Self』(16年)といったメタル寄りのアルバムに加え、クラシック作品やクリスマス・アルバムなど幅広い作品をリリース。一方で、テレビの歌手オーディション番組のコーチを務めるなど、その人気はお茶の間にも根付いていった。冒頭「ターヤはスターである」と書いたが、これは決して大げさな表現ではない。ナイトウィッシュ在籍時から、地元フィンランドの大統領主催のパーティに招かれるほど、彼女の人気、実力は広く認められているのである。
2012年にはライヴ盤『アクト I』をリリースしヨーロッパで大ヒットとなったが、2018年には第2弾となるライヴ盤『アクト II』をリリース。名門メトロポリス・スタジオにわずか20名の観客を招いて開催された非常にスペシャルなライヴを収録したものである。
2019年には、7作目のソロ・アルバムとなる『イン・ザ・ロウ』をリリース。そのタイトル通り、彼女の歌手人生において最も“生々しい=RAW”な作品だ。ヘヴィでメランコリック、繊細で重厚。ターヤの多彩な精神性と想いを歌い上げ、その内面を露わにし、脆く、それでいて猛々しい。その美麗でオペラチックな歌唱は、さらに磨きがかかっている。