カンニバル・コープスはアメリカのデス・メタル・バンド。というよりも、彼らはデス・メタルというジャンルそのもののような存在である。フロリダのシーンの一員という印象が強いが、もともとはニューヨークのバッファロー出身。88年、アレックス・ウェブスター(Ba)、クリス・バーンズ(Vo)らによって結成された。翌89年にバンド名を冠したデモを発表後、即名門Metal Blade Recordsとサインというスピード出世を果たす。そして90年にデビュー作『Eaten Back to Life』がリリースされるやいなや、カンニバル・コープスはデス・メタル界に突如現れた新星として、世界中のファンから崇めまつられた。それもそのはず、とにかくこのアルバムのインパクトは絶大であった。アートワークや歌詞は、ドイツをはじめとするいくつかの国で本作が発禁処分となったのも当然の、異常なまでのグロテスクぶり。一切感情を見せないクリス・バーンズのヴォーカルも、過去には誰も聴いたことのないものだった。すでにDeathやMorbid Angel、Obituaryを知っていたデス・メタル・ファンも、このまったく新しい世界観には驚愕せざるをえなかったのである。
彼らの登場により、デス・メタルはさらに一段上のブルータリティを獲得したのだ。『Butchered at Birth』(91年)、『Tomb of the Mutilated』(92年)、『The Bleeding』(94年)とリリースしたところで、バンドはデス・メタルの聖地、フロリダへと移住。95年にはクリス・バーンズを解雇し、Monstrosityのジョージ・コープスグラインダー・フィッシャーを加入させる。その後も彼らは順調に活動を継続。18年の『Red Before Black』まで、トータルで14枚のスタジオ・アルバムを発表している。そのいずれも「デス・メタル」としか形容しようのない、一切のブレのないスタイル。1枚の例外すらない。カンニバル・コープスは、30年にわたりデス・メタルというジャンルにプライドを持ち、シーンを牽引し続けているのだ。
2023年9月には、アルバム『Chaos Horrific』をリリース。前作よりデス・メタル界最強のギタリスト、エリック・ルータンが加入し、さらなるパワーアップを見せた彼ら。今回もブルータルでありながら、どこかキャッチーな楽曲。相も変わらず残虐さマックスの歌詞。不純物など一切混入していない、骨の髄までデス・メタルのアルバムだ。これ以上の説明不要。王者の貫禄を感じさせる傑作である。