スウェーデンの首都ストックホルムで、'88年にデス・メタル・バンドとしてスタートしたTHERIONは、常に進化と新化を繰り返し、深化し続けてきた稀有なるバンドだ。これまでに『OF DARKNESS…』('91)、『BEYOND SANCTORUM』('92)、『SYMPHONY MASSES:HO DRAKON HO MEGAS』('93)、『LEPACA KLIFFOTH』('95)、『THELI』('96)、『VOVIN』('98)、『DEGGIAL』('00)、『SECRET OF THE RUNES』('01)、『LEMURIA』('04)、『SIRIUS B』('04)、『GOTHIC KABBALAH』('07)、『SITRA AHRA』('10)と、オリジナル・スタジオ・フルレンス作だけでも12枚をリリース。'90年代の早い段階において、激烈なる轟音にクラシカルで耽美なムードをまとわせる手法を既に実践していた彼等は、以降、何度もメンバー・チェンジを繰り返しながら、シンフォニックでドラマティック、神秘的かつ幻想的なサウンドに磨きを掛けていった。
大きな転機となったのは第5作『THELI』で、重厚なるオーケストレーションとオペラティックなコーラス・ワークを大胆に採り入れた同アルバムにて、デス・メタル期の完全なる終焉を高らかに宣言。続く『VOVIN』では、遂にメタル・ヴォーカル不在となり、全編に合唱隊を配し、オペラティックな路線がさらに強化されるも、彼等──いや、もはやとっくに唯一のオリジナル・メンバーとなっていた首魁クリストフェル(g,vo)が、決して暗黒の使途たるメタルの本質を失わなかったのは特筆されるべきであろう。また、'12年にはフレンチ・ポップをデカダンに料理した異色のカヴァー集『LES FLEURS DU MAL』を発表し、もはや何をやってもその孤高性が揺らぐことはないと証明して見せた。
活動30周年を迎える'18年、クリストフェルは念願だったロック・オペラ作『BELOVED ANTICHRIST』をリリース。CD3枚組で全46曲、3時間半にも及ぶ正に超大作。ロシアの思想家で哲学者、ウラジミール・ソロヴィヨフの著作『A Short Tale Of The Antichrist』をベースに、時に優美に、壮麗に、荘厳に、重厚に──クリストフェルによるオリジナル・ストーリーが綴られている。
'21年1月には、3年ぶり17枚目となるアルバム『リヴァイアサン』をリリース。「ファンのために敢えて新しいことをやらない」というコンセプトで製作された。ナイトウィッシュのマルコ・ヒエタラがゲスト・ヴォーカルで参加している。さらに、'22年11月には、前作のコンセプトに引き続き『リヴァイアサンII』をリリース。98年の名作『Vovin』のミステリアスな雰囲気が再現される!
'23年12月、『Leviathan』トリロジーの最終作となる『Leviathan III』をリリース。常に新境地を開拓してきたTherionであるが、この『Leviathan』シリーズに限っては、アーティストとしての欲求よりも、ファンの望むものを優先するという、ある種のチャレンジが優先されている。本作も、デス声と女性ヴォーカルが交錯する、まさにTherion以外には作り得ないシンフォニックなメタルがギッシリ。これぞファンが望むものと言うべき仕上がり。