リングス・オブ・サターンは、カリフォルニア出身のテクニカル・デスコア・バンド。ギタリストのルーカス・マンを中心メンバーとし、09年に活動を開始。CARNIFEX、SUICIDE SILENCE、WHITECHAPELなどに影響されたテクニカルなデスコア+宇宙~ルーカス自身の言葉を借りればエイリアン・デスコア~というのが、そのコンセプトであった。同年ルーカスは2人のメンバーを加え、「Abducted」という曲をネット上で発表。そのテクニカルぶり、変態ぶりで、たちまち大きな話題となった。ちなみにこの時点で、メンバーは全員高校生であったというのだから驚きだ。彼らは間髪入れず、デビュー・アルバム『Embryonic Anomaly』(自主制作)を発表。するとこれがUnique Leader Recordsの目にとまる。Unique Leader Recordsは、同じくカリフォルニアのテクニカル・デス・メタル・バンド、Deeds of FleshのErik Lindmarkが設立したレーベル。この手の音楽の総本山とでもいうべき名門で、Deeds of Fleshはもちろん、DisgorgeやFallujahなどもリリースしている。つまり若きリングス・オブ・サターンは、初アルバムにしていきなりシーンのボスに認められたということだ。Unique Leader Recordsはまず手始めに、彼らのデビュー作『Embryonic Anomaly』を再発。これにより、リングス・オブ・サターンの名は世界へと轟いていく。
高校生によるスタジオ専門のプロジェクト的な存在としてスタートしたリングス・オブ・サターンであったが、この頃にはメンバーを補充し、積極的にツアーもこなす本格的なバンドへと変貌。「パソコン上の編集に頼り切ってるんじゃないの?」という、あまりに技術水準が高すぎるバンドにしばしば向けられる疑惑を、ステージ上で簡単に、それも完璧に払拭してみせた。その実力を買われ、The Summer Slaughter Tourといった名のあるエクストリーム・メタルのツアーにも参加、その突出したステージングでさらなる反響を呼んだ。
しかしこの後、バンドはいくつかの困難に直面する。まず11年の終わりに、初期からのメンバー2人が脱退。残されたルーカス・マンは新メンバーを補充、セカンド・アルバム『Dingir』をレコーディングするが、途中バンド名を巡るトラブルが勃発。「リングス・オブ・サターン」という名の商標権を主張する者が現れたのだ。最終的にバンド名の使用継続は認められたが、法的争いの経費で大金を失っただけでなく、このトラブルの間に『Dingir』がインターネット上に流出してしまうという災難にまで見舞われることに。しかも流出したのは作業途中の中途半端なもの。これに対抗し、バンドは本作の完成版をYouTube上で無料公開するという苦肉の策をとった。踏んだり蹴ったりの状況ではあったが、アルバムを無料公開することで、リングス・オブ・サターンがさらに多くのファンを獲得するのに成功したのは間違いないだろう。14年、やはりUnique Leader Recordsから発表されたサード・アルバム『Lugal Ki En』は、ビルボード200チャートの126位にランクインするという快挙を果たす。
17年には、エクストリーム・メタル界の最高峰レーベル、ニュークリア・ブラスト・レコードとの契約を手にし、4枚目のフル・アルバム『Ultu Ulla』をリリース。変態性とメロディックさのコントラストが強烈な傑作となった。19年には、5枚目となるニュー・アルバム『ジディム』をリリース。本作の内容については、ルーカスの「今回は古くからのファンを喜ばせる内容にしたかった」という発言に、すべてが凝縮されている。さらにテクニカルに、さらに変態に。自らの限界を破る挑戦をした作品となった。
【メンバー】
ルーカス・マン(ギター/ベース/シンセサイザー)
ジョエル・オーマンズ(ギター)
イアン・ベアラ(ヴォーカル)
マルコ・ピトルゼッラ(セッション・ドラムス)