スウェーデンの正統派ヘヴィメタル・バンド、ハンマーフォール。彼らが結成されたのは93年のこと。元々はオスカー・ドロニャックとイン・フレイムスのイェスパー・ストロムブラード(2人はセレモニアル・オースというデス・メタル・バンドをやっていた)のサイド・プロジェクトとしてスタートしたハンマーフォールであるが、96年に現在のヴォーカリスト、ヨアキム・カンスが加入。本格的にバンドとして始動、Nuclear Blastとのディールを得た彼らは、翌97年に『GLORY TO THE BRAVE』でアルバム・デビューする。
当時のメンツは、ヨアキム・カンス(vo)、オスカー・ドロニャック(g)、グレン・ユングストローム(g)、フレドリック・ラーソン(b)、イェスパー・ストレムブラード(ds)だったが、IN FLAMESの活動で忙しくしていたイェスパーは既に脱退の意向を固めており、レコーディングで全曲のドラムをプレイしていたのはパトリック・ラフリングだった。
その後、パトリックが正式加入し、リード・ギターをステファン・エルムグレン、ベーシストをマグナス・ローゼンに交代して、翌'98年にセカンド『LEGACY OF KINGS』を発表。伝統的HR/HMの王道を見事に復古させたドラマティックかつ勇壮なサウンドにより、まずドイツでブレークを果たした彼等は、やがて汎ヨーロッパを席捲していき、続くサード『RENEGADE』('00)がスウェーデン本国のチャートでNo.1を獲得する頃には、ピュア・メロディック・メタルの救世主と呼ばれるまでになっていた。以降、何度かメンバー・チェンジを経ながら、『CRIMSON THUNDER』('02)、『CHAPTER V:UNBENT, UNBOWED, UNBROKEN』('05)、『THRESHOLD』('06)、『NO SACRIFICE, NO VICTORY』('09)、『INFECTED』('11)、『(R)EVOLUTION』('14)、『BUILT TO LAST』('16)とアルバム・リリースを重ねていった彼らは、盤石なファン層を堅持。ヨアキム(vo)、オスカー(g)に加えて、'08年加入のポンタス・ノルグレン(g)、'07年に出戻ったフレドリック・ラーソン(b)、'14年加入のデヴィッド・ウォリン(ds)というラインナップによる10枚目のアルバム『BUILT TO LAST』は、スウェーデンで第6位、ドイツで第8位というチャート結果を残している。
近年では、2017年に『GLORY TO THE BRAVE』(1997)、2018年に『LEGACY OF KINGS』(1998)という初期の名盤の20周年記念盤をリリース。2019年8月には、3年ぶり11枚目のスタジオ・アルバム『ドミニオン』をリリース、9月には“METAL WEEKEND”にて来日公演も行っている。
20年には、ライヴBlu-ray『ライヴ!アゲインスト・ザ・ワールド』をリリース。2020年2月15日、ドイツのMHPアリーナで収録されたもので、アリーナという大会場の大きなステージでのライヴは迫力十分だ。
21年にはサード・アルバム『レネゲイド』の20周年記念盤をリリース。マイケル・ワグナーをプロデューサーに迎えて制作された本作は、発売されるや否やスウェーデンのチャートでNo.1を獲得。ハードロック・ヘヴィメタル系のアーティストが一位を獲得するのは、ヨーロッパ以来の快挙であった。現在もライヴの重要レパートリーであるタイトル曲を筆頭に、これぞヘヴィメタルと言うべき名曲揃いの本作。今回は20周年記念盤ということで、オリジナルのミックスに加え、フレドリック・ノルドストロームによるリミックス・ヴァージョンも収録という豪華な内容。さらに当時のライヴや舞台裏をたっぷりと収録した、140分に渡るDVD付きも登場。若かりし頃のハンマーフォールのおちゃめな素顔をこれでもかと楽しむことができる。
22年、12枚目のアルバム『ハンマー・オブ・ドーン』をリリース。ヨアキムをして、「仕上がりにどれほど満足しているか、言葉では言い表せない」と言わしめるこの作品。そのタイトルからして意気込みが伝わってくるだろう。ヘヴィでパワフルでエピックなヘヴィメタルを演奏すること。四半世紀に渡る活動の中で、ハンマーフォールのその信念がブレたことなど一度もない。『ハンマー・オブ・ドーン』も、当然のことながら最高のハンマーフォールが詰まった作品。オスカーも、「自分たちのクリエイティヴィティは最高潮に達している」と自信を覗かせる。ヘヴィメタルを知り尽くした男、フレドリック・ノルドストロームによるプロダクションも見事。
23年4月には02年の4thアルバム、『クリムゾン・サンダー』の20周年記念盤をリリース。本国スウェーデンではプラチナム・ディスクとなった本作。ハンマーフォール・ファンはもちろん、ヘヴィメタル・ファンならば、その内容はおなじみであろうが、この20周年記念盤はCD3枚組という大ボリュームのスペシャル・エディション。本編のアルバムには、巨匠フレドリック・ノルドストロームによるリミックス・リマスターが施されおり、この名盤を非常にパワフルでクリアな音像で再体験できる。さらにボーナス・ディスクには、未発表のプリプロダクション・テイクやライヴ等がぎっしり入っており、本アルバム未体験のファンはもちろん、すでに本作を聴き込んでいるというマニアも改めて楽しめる仕様となっている。
24年8月には13枚目となるアルバム『Avenge the Fallen』をリリース。本作について、オスカーは「いつも通りにやっただけのこと」と言い切る。「30年前にこのバンドを始めたのは、俺が大好きだった音楽を誰もプレイしていなかったから。誰もやらないから、俺がやった。気持ちは今も変わらない。俺が書く音楽は、俺が愛し信じる音楽。つまりヘヴィメタルだ!」という彼の言葉に一切の偽りはない。古巣ニュークリア・ブラストへの復帰作となった本作も、ヘヴィでパワフル、そしてエピックなメタルがギッシリ。これぞHammerfall、これぞヘヴィメタル。ファンが期待するヘヴィメタルを提供し続けてきた彼ら。その姿勢にブレなどあるはずもない!おなじみフレドリック・ノルドストロームによるミックスも見事。