英国の闇を司る耽美ブラック・メタルの重鎮が放つ第11教典は、中世の魔女狩りを現代に蘇らす禁断の典範だ。
1991年、ヴォーカリストのダニ・フィルスを中心に英国サフォークで結成。ブラック・メタルのヘヴィネスと畳みかけるブラスト・ビート、ゴス・ロックの漆黒の浪漫、ハマー・ホラー映画の恐怖などを取り入れた独自の美学と音楽性により、一躍エクストリーム・メタル界の寵児となる。
吸血鬼カーミラや残虐の貴婦人エルゼベエト・バートリ、闇の種族ミディアン、女邪神リリスなどを題材にしたダークなドラマ性、そしてバンドTシャツの反キリスト教的メッセージのせいでカトリックの総本山ヴァチカン市国でメンバーが逮捕されるなどのセンセーショナリズムによって、彼らはイギリスで最も成功したエクストリーム・メタル・バンドのひとつとなった。
デビュー以来、数々のメンバー交替を経ながらも、ダニ・フィルスの鋭利に心を突き刺すヴォーカルと揺るがぬカリスマ性で熱狂的な支持を得てきた彼らだが、前任ギタリストのポール・アレンダーが脱退(ホワイト・エンプレス結成)、リチャード・ショウとアショクのツイン・ギター編成になったことで、ギターのオーケストレーションが強化。またキーボード兼女声ヴォーカルのリンゼイ・スクールクラフト(元ダイダリアン・コンプレックス)が加わって生み出すシンフォニックでブルータルな世界観は、往年の名盤『ダスク・アンド・ハー・エンブレイス』(1996)や『鬼女と野獣』(1998)を彷彿とさせるものだ。