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セパルトゥラほど様々なエクストリーム・メタルのサブジャンルに影響を与えたバンドはいないのではないか。マックス、イゴールのカヴァレラ兄弟がセパルトゥラを結成したのが84年。同郷のオーヴァードーズとのスプリットLP『Bestial Devastation』(85年)、デビュー・アルバム『Morbid Visions』(86年)は、当時としては非常識なまでの速度で多くのスラッシュ・ファンの度肝を抜いただけでなく、後のブラック・メタル勢にも多大なる影響を与えたレジェンド作。その後、現在バンドの主導権を握るアンドレアス・キッサーが加入し製作された『Schizophrenia』(87年)、『Beneath the Remain』(89年)、『Arise』(92年)はスラッシュ/デスの名盤として、今なお多くのファンに愛されている。さらに93年の『Chaos A.D.』、ロス・ロビンソンをプロデューサーに迎えた96年の『Roots』では、いわゆるグルーヴ・メタルの礎を築いた彼ら。90年代というヘヴィ・メタル暗黒期、セパルトゥラは時代に迎合するのではなく、自ら新時代を切り開いてみせたのだ。
『Roots』リリース後、マックスが脱退。後任として黒人ヴォーカリスト、デリック・グリーンが加入する。新体制で製作された『Against』(98年)では『Roots』のワールド・ミュージック的要素を発展させつつも、ハードコア・パンク的感触を強化、新生セパルトゥラの誕生を強くファンに印象付けた。06年に今度はドラマーのイゴールが脱退。新ドラマーを迎え再びコンセプト・アルバムという形式をとった『A-LEX』(09年)をリリース後、ヨーロッパ最大手のNuclear Blast Recordsへと移籍。13年の『The Mediator Between Head and Hands Must Be the Heart』は久々のロス・ロビンソン・プロデュース作品として話題になった。16年にはギタリストのアンドレアス・キッサ―が、リオ・パラリンピックの閉会式に登場したことも話題に。そして『マシーン・メサイア』をリリース。スラッシュからグルーヴ・メタル、ワールド・ミュージックと言った彼らお得意の要素に加え、シンフォニックなアレンジメントまでも導入、新たにプログレッシヴな一面を見せ、ファンを驚かせた。
前作から3年、2020年には15枚目のスタジオ・アルバム、『クアドラ』がリリースされた。オールド・スラッシュ・フィーリングの復活、そしてトライバル・パーカッション、シンフォニック・アレンジメント。彼らのキャリアを総括するプリミティヴさと洗練の奇跡的融合だ。セパルトゥラに後退はない。