2012年、ブレーメンで結成。ハンノ(ギター、ヴォーカル)、エリンチ(ドラムス)というミニマルな編成だ。彼らの一番の特徴は、ヘヴィな音楽を追求しているにもかかわらず、ベースレスの2人組ということだろう。2人だけというのが、彼らのポリシーだったわけではない。当初、ギター・ヴォーカルのハンノ、そしてドラムのエリンチは、他のバンドと同じようにベーシストを探していた。だが幸か不幸か、知り合い全員にあたってみても、誰も加入の意志を示すものはいなかったのである。それならそれで構わない。ちょっとした工夫をすれば、2人でも十分パワフルでヘヴィな音が出せる。2人きりで録音してみた音源は、あっさりとフィンランドのSvart Recordsとの契約をもたらし、マンターは14年、『Death by Burning』でアルバム・デビューを果たすこととなる。となれば、もはやベーシスト探しをする必要なんてない。2人で十分やっていけると証明されたのだから。
その後マンターは、激しいツアーをこなしていく。当時ツアーに明け暮れていたハンノは、住むところすら必要ないと、借りていたアパートを引き払ったほど。たった2人とは思えない凄まじい轟音のステージで大きな話題となった彼らは、あっという間にヨーロッパ大型フェスの常連となっていく。そして結成からわずか3年で、彼らはメタル界最高峰のレーベル、ニュークリア・ブラスト・レコードと契約。16年のセカンド・アルバム『オード・トゥ・ザ・フレイム』は、日本でも発売され、翌17年には来日公演も実現。2人が繰り出す轟音ステージは、多くのエクストリーム・ミュージック・ファンの度肝を抜いた。そして2018年には、サード・アルバム『ザ・モダン・アート・オブ・セッティング・アブレイズ』、20年には『Grungetown Hooligans II』というカヴァー・アルバムもリリース。
22年には、メタル・ブレイドに移籍して初となるアルバム『ペイン・イズ・フォーエヴァー・アンド・ディス・イズ・ジ・エンド』をリリース。
彼らの音楽をカテゴライズするのは難しい。バンドの資料では、「ブラック・ドゥーム・パンク・キメラ」と、ほとんどヤケクソの分類がなされているが、確かに彼らのスタイルは、ドゥーム・メタルでありブラック・メタルであり、そしてパンクでもあると言えるし、そのいずれでもないとも言える。面白いのは、ハンノとエリンチの2人に、「さまざまなジャンルを融合してやろう」という野心など一切ないことだ。彼らは「ハードでエクストリームな音楽をやりたい!」ということ以外、細かいことは何も考えていないのだ。ただただ爆音でヘヴィな演奏をした結果、どんなバンドとも違う、マンター・サウンドが自然とできあがったのである。そしてそのサウンドは、メタル、パンク関係なく、あらゆるエクストリーム・ミュージック・ファンの大きな支持を集めている。