ファンダンゴのシンガーとしてプロのキャリアをスタートさせたジョー・リン・ターナー。レインボーのメンバーに抜擢され、『アイ・サレンダー』(1981年)、『闇からの一撃』(1982年)といった名作を生み出したことで一気に知名度を上げた彼は、バンド解散後、1stソロ・アルバムの『レスキュー・ユー』(1985年)をリリースする。その後、ソロとして活動を行なっていた時に、イングヴェイ・マルムスティーンに誘われ、アルバム『オデッセイ』(1988年)とライヴ・アルバム『トライアル・バイ・ファイア』(1989年)を発表した後、再結成ディープ・パープルに参加し、『スレイヴズ&マスターズ』(1990年)をリリースする。1992年にディープ・パープルを脱退すると、ジョーはソロ活動をメインにする一方で、様々なプロジェクトに参加。そうした中で、イタリアのフロンディアーズ・レコードの企画によってスタートしたのがこのサンストームであった。
サンストームの歴史はジョーの1stソロ・アルバム『レスキュー・ユー』のリリース後に、2ndアルバム用に制作しながら、お蔵入りとなった幻のデモ音源が20年後にフロンディアーズ・レコードの社長のセラフィノ・ペルジーノの手に渡ったことに端を発する。そのデモを作品として世に出したいと思ったセラフィノの考えに同意したジョーは、さらに楽曲を加えて、ピンク・クリーム69のデニス・ワード(b)とウヴェ・リーテナウアー(g)らとレコーディングを実施。アルバムとして完成させたのが『サンストーム』(2006年)であった。
この作品が叙情派のメロディアス・ハード・ロック・アルバムとして高く評価されると、サンストームはプロジェクトして動き出し、2ndアルバム『ハウス・オブ・ドリームス』(2009年)、3rdアルバム『エモーショナル・ファイア』(2012年)をリリース。その後、よりハードなサウンドのアルバム制作を望んだジョーは参加メンバーを一新し、フロンディアーズ・レコードで数多くのプロジェクトに楽曲を提供しているアレッサンドロ・デル・ヴェッキオらを起用して、4thアルバムの『エッジ・オブ・トゥモロー』(2016年)を発表。この作品に好感触を得たジョーが、前作同様にアレッサンドロをブレーンに制作したのが、5thアルバムの『ザ・ロード・トゥ・ヘル』(2018)である。
快活なナンバーからバラード系の曲まで叙情派のヴォーカル・メロディを武器にしたメロディアス・ハード・ロックを基本にしつつ、アップ・テンポの曲やヘヴィな曲まで、ロック色を強く打ち出したバンド。ジョーの魂のこもった歌唱も文句なく素晴らしく、シモーネの技巧派のギター・ソロなど、圧倒的なクオリティを誇る。