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タンカードはドイツのフランクフルト出身。DESTRUCTION、KREATOR、SODOMと共にジャーマン・スラッシュ・メタルのビッグ4の一角を担うバンドと見なされている。「ジャーマン・スラッシュ三羽ガラスの次のポジションに位置するバンド」との意見もあるにはあるが、バンドの初期から現在に至るまで、音楽面での大きな転向やバンドの活動停止/解散などを一切経てこなかった彼らこそが、ドイツ産スラッシュ・メタルというジャンルでは最も信頼のおけるバンドであり続けてきたと言えるかもしれない。1982年にAVENGERとして活動を開始、同年にVORTEXに改名したが、それも束の間、1983年には陶器や金属で出来たビール・ジョッキを意味するドイツ語、タンカードと改名した。
そのバンド名が表わすとおり、メンバー達は揃いも揃って大酒飲み。アンドレアス“ゲッレ”ジェレミア(ヴォーカル)、アクセル・カッツマン(ギター)、ベルナルド・ラップリッチ(ギター)、フランク・トールワース(ベース)、オリヴァー・ウェルナー(ドラムス)という5人での活動開始だったが、1986年、父親から節酒を命じられたベルナルドに代わってアンディ・バルガロプロスが加入、地元『Noise Records』よりアルバム『ゾンビ・アタック』でデビューを果たした。NWOBHM、ハードコア・パンク、スラッシュ・メタルから強く影響を受けた彼らの音楽は、当時の日本の輸入盤店でも話題となり好セールスを記録した。
1989年にドラマーがオリヴァーからアルナルフ・タンに、1994年にはそのアルナルフからオラフ・ズィセルに交代、ギター・パートもツインからシングルに変わるなどラインナップの変遷は多かったが(現在のギタリストのアンドレアス“アンディ”グートヤーは2000年に加入)、1987年発表の2ndアルバム『ケミカル・インヴェイジョン』以降、2012年発表の15thアルバム『ア・ガール・コールド・セルヴェッサ』、2014年発表の16thアルバム『R.I.B.』、2017年発表の17thアルバム『ワン・フット・イン・ザ・グレイヴ』まで、コンスタントなペースでリリースしてきている。
また、ヨーロッパのメタル・シーンではこんな噂もあるほどだ。「タンカードのドラマーのオラフ・ズィセルはここ何年も水を飲んだことがないと言われている。彼は、彼自身の常飲料であるビールを100パーセント信頼しているからだ」
その噂に関する真偽のほどは定かではないが、1つ、これは真実だと断言出来ることがある。ドイツ出身のスラッシュ・メタル・バンドとしては数少ない「一度も解散していないバンド」でもあるタンカードが、昔も今も、そして未来もドイツで最もポジティヴかつファニー、そしてアグレッシヴなスラッシュ・メタルを聴かせるバンドであるということだ。