エクストリーム・メタル・ファンで、セパルトゥラを知らぬものはいないだろう。80年代後半から90年代にかけての『Schizophrenia』や『Beneath the Remains』、『Chaos A.D.』、『Roots』といった作品で、デス・メタル、そしてニュー・メタルという2つのジャンルを牽引していったブラジルのバンドである。だが、彼らにはそれ以前にも重要な歴史がある。85年の『Bestial Devastation』(Overdoseとのスプリット)、そして86年のデビュー・アルバム『Morbid Visions』の持つスピード、プリミティヴさ、イーヴルさは、北米やヨーロッパのバンドのそれとは比較にならないほど突出したものだった。当時、世界中のメタル・マニアがこれらのレコードを探し求めたものだ。実際、いまだにこの2作をセパルトゥラのベストとするものも少なくない。
2023年7月、マックス(G,Vo)、イゴール(Dr)のカヴァレラ兄弟が、この2枚の作品をリレコーディングし、再び世に放つこととなった。「その荒々しさや時代を超えたスピリットはそのままに、現代のサウンド・クオリティで」というコンセプトで再録されたという本作。その謳い文句通り、確かにサウンドは良くなっているものの、ブルータルさはオリジナルの2倍増しという奇跡の仕上がり。アンドレアス・キッサー加入以降のセパルトゥラ・ファンも、これで初期の素晴らしさに開眼するであろうし、初期ファンも改めてこれらの作品に惚れ直すことだろう。85年の時点でほぼブラストビートに到達していた彼らの慧眼には、ただただ驚くばかり。
2024年7月にはあの『Schizophrenia』の再レコーディングをリリース。『Schizophrenia』はSepulturaが87年にリリースした、フルレングスとしては2枚目にあたる作品。このアルバムから加入したアンドレアス・キッサーのトラディショナルなヘヴィメタルのバックグラウンドと、マックスとイゴールのブルータリティが見事に止揚した本作で、彼らは大手ロードランナー・レコードとの契約をゲット。次作『Beneath the Remains』(89年)で世界制覇に乗り出していくことになる。そんなバンドにとって大きなターニング・ポイントとなった名盤を、21世紀のサウンド・クオリティで蘇らせる。マックス(G、Vo)、イゴール(Dr)に加え、Go Ahead And Dieのリーダーであり、マックスの御子息でもあるイゴール・アマデウス(B)、そしてPig Destroyerのトラヴィス・ストーン(G)という最強布陣で制作された本作。ボーナス・トラックとして未発表の新曲も収録。