94年、ギタリストのマイケル・ロメオを中心に結成されたアメリカのプログレッシヴ・メタル・バンド、シンフォニー・エックス。同年、バンド名を冠したアルバムでデビュー後、現代プログレの総本山、インサイド・アウトと契約。97年にリリースされたサード・アルバム『The Divine Wings of Tragedy』は、プログレッシヴ・メタルの傑作と絶賛され、アメリカにシンフォニー・エックス有りと世界中のファンにその存在を印象づける作品となった。ネオクラシカルの流れを組むそのスタイルは、プログレッシヴながらも過剰に難解になることはなく、結果として彼らはプログレ・ファンだけでなく、トラディショナルなヘヴィメタル好きのハートを掴むことにも成功していった。
2023年4月、8枚目のアルバム『アイコノクラスト』(11年)と、9枚目のアルバム『アンダーワールド』(15年)を再発。
ドイツの大手ニュークリア・ブラストに移籍して初のアルバムとなった『アイコノクラスト』は、機械に支配される人類がコンセプト。いきなり10分超のタイトル・トラックからスタートという、実に意欲的な作品。彼らのキャリアの中でもプログレッシヴ色が強めの名作。サウンドも実にヘヴィ。そこら中に散りばめられたシンフォニー・エックスらしいメロディ、フックとプログレッシヴさのバランスが見事。
『アンダーワールド』はダンテの『神曲』にインスパイアされ、3の倍数をアルバムの随所に盛り込んだという実にミスティックな作品。アルバムという形式の重要性が年々薄れていく中、「アルバム・トータルとして聴くに値する作品を作りたかった」というマイケル・ロメオの言葉に、ベテラン・プログレッシヴ・メタル・バンドの意地を感じさせる深淵な内容だ。一方で、前作『アイコノクラスト』と比べると4-5分台の曲がメインと、若干コンパクトな作りになっており、聴きやすさが増している印象。