「イバラキ」と聞けば、日本人の誰もが茨城県を思い浮かべるだろう。だが、この茨鬼は、茨城県のことではない。それなら大阪の茨木市かというと、そうではないのだが、まったくのハズレでもない。平安時代に京都を荒らし回ったとされる鬼の中に、茨木童子(イバラキドウジ)というのがいて、この鬼、大阪の茨木市出身だという説があるのだ。21世紀に再びこの世に姿を表したこの茨鬼の正体は、マシュー・ヒーフィー。日本ではキイチの名で親しまれる、トリヴィアムのギター・ヴォーカル担当である。彼がブラック・メタルのソロ・プロジェクトに手をつけているという話は、10年くらい前から出ていた。初期にはMrityuというプロジェクト名で、ノルウェジアン・スタイルのブラック・メタルをやろうという構想を立てていたキイチは、エンペラーのイーシャンに助言を求めた。そして、「ノルウェー人でない君が、ノルウェーのスタイルをやる必要はない」という彼のアドヴァイスに感銘を受け、自分のルーツの一つである日本を題材にすることにしたのだ。