イギリスから飛び出した期待の新人、エレクトリック・ピラミッド。ヒッピー的な古き良きロックのフィーリングと、21世紀の新しさが同居するそのスタイルは、ネオ・ノスタルジック・ロックとでも呼びたくなる。バンドの顔を務めるヴォーカリスト、そしてソングライターでもあるオル・ビーチは、映画『ボヘミアン・ラプソディ』でもおなじみ、クイーンのマネージャー、ジム・ビーチのご子息でもある。
そんなオルのもとに、4人のミュージシャンが集まって結成されたのが、このエレクトリック・ピラミッドだ。リード・ギターのクリスチャン・メンドーサはメキシコ出身。その後ニューヨークに渡り、ギタリストとしての腕を磨いた。やはりリード・ギターを担当するライナス・テイラーは、イギリス出身。ロンドンのブルース・シーンで活躍し、あのブライアン・フェリーのバンドのメンバーも務めた経歴を持つ強者だ。ベースのルイージ・カサノヴァはイタリア出身。フォリナーとステージを共にしたこともある経験豊富なベーシストだ。ドラムのクリス・ブライスはイギリス出身。自らのバンドでコールドプレイのスタジアム・ツアーに帯同したこともある。
21年にアルバム・デビュー。世界各地をツアーし、サマー・ソニック・フェスティヴァルで日本にもやってきた経験を持つ。プロデュースは、ミューズ、オアシス、ロバート・プラントとの仕事で知られるジョン・コーンフィールド。往年のロックスターたちを彷彿とされるサイケデリックでレイドバックした雰囲気、そして90年代以降の音楽を通過したアレンジメント。バンドの演奏力の高さについては言うまでもなく、オルのヴォーカルもデビュー・アルバムとは思えないほど貫禄十分。ブリティッシュ・ロックらしい憂いを持った楽曲の数々は、日本人の心に深く響く。危機が叫ばれて久しいロックの世界に久々に現れた救世主、エレクトリック・ピラミッド。そのデビュー作を聞かずして、音楽は語れない。