デンマークのヘヴィメタル・バンドと言えばそう、プリティ・メイズ。20年にはそのヴォーカリスト、ロニー・アトキンスがステージ4の癌と診断されたことを公表し、ファンに大きな衝撃を与えた。だが、「気をしっかり持って、ゴールを定め、夢を追って生き続けることを選択した」というロニーは21年、キャリア初のソロ・アルバム『ワン・ショット』を制作。新旧プリティ・メイズ のメンバーを筆頭に、数々のゲストを迎えた本作は、彼の集大成とでもいうべき素晴らしい仕上がりとなった。さらに22年3月には、セカンド・アルバム、『メイク・イット・カウント』をリリース。やはり多くのゲストを迎えて制作されたこの作品でも、「メロディこそが最優先」だと言い切るロニーの本領が発揮された。
2022年11月には、『シンフォマニアック』と題されたEPをリリース。『メイク・イット・カウント』収録の4曲のオーケストラ・ヴァージョンを聴くことができる。タイトル曲を始め、見事なシンフォニック・アレンジメントで生まれ変わった楽曲たち。ドラマチックなオーケストラが、ロニーのパワフルでエモーショナルな歌唱をさらに盛り上げる。ヘヴィなギターという要素が取り除かれたことで、ロニーが最も大切にしているというメロディがより鮮明に浮き彫りになっているのが非常に興味深い。
23年10月には3枚目のソロ・アルバム『Trinity』をリリース。すべての曲がギターを使って書かれたということで、過去2作と比べると、その仕上がりは少々ヘヴィ。しかし、ロニーお得意の極上メロディはもちろん健在だ。「私にとって、良い曲とは良いフック、メロディのこと。そしてそれが私の道を拓いてくれたのさ」という彼の言葉が、それを裏付けている。