カダヴァーは複雑な経歴を持つバンドだ。88年、後にケルティック・フロストやサティリコンでプレイすることになるアンダース・オデンを中心に結成される。90年には『Hallucinating Anxiety』でアルバム・デビュー。イヤーエイク傘下、カーカスのジェフ・ウォーカーとビル・スティアが設立したネクロシス・レコードからのリリースであったことからもわかる通り、この作品ではゴリゴリのデス・メタルを聞かせていた。イヤーエイクから発表された92年のセカンド、『…In Pains』ではフルートなども導入し、プログレッシヴな側面も見せたが、翌93年に解散。
その後しばらくメタル・シーンから遠ざかっていたアンダースであるが、サティリコンの作品にギタリストとしてゲスト参加したことが1つのきっかけとなり、99年にカダヴァーは復活。ただし、この時はカダヴァー・インクという名義であった。この時期は、ブラック・メタル寄りのサウンドを聴かせるアルバム1枚(『Discipline』(01年))を残している。カダヴァー・インクのウェブサイトは、殺人事件の物証廃棄を請け負う会社のような作りになっていたため、実際にノルウェー政府の捜索を受けるというトラブルに巻き込まれ、02年には再びバンド名をカダヴァーに戻すハメに。04年には、『Necrosis』をリリースするも、同年再び解散。その後アンダースは、再結成されたケルティック・フロストで活躍することになる。
しばらく息を潜めていたカダヴァーが、活動再開をしたのが2010年のこと。それから10年、待望のニュー・アルバム、『エダー&バイル』が2020年にリリース。過去のカダヴァーの作品よりもダークでナスティでブルータル。失望、裏切り、欺瞞、そして死。人生の闇を心の底から吐き出したというアンダース。このハイクオリティな下劣さこそが、リアル・デス・メタル。
2023年、約3年ぶりのニュー・アルバム『ジ・エイジ・オブ・ジ・オフェンデッド』をリリース。本作では『…In Pains』期のベーシスト、アイラート・ソルスタッドが復活。そして、あのTNTのギタリストであるロニー・ル・テクロが参加。ロニーは自らを魔女と称するほどのオカルト好きではあるのだが、それにしてもまさかの人選である。だからと言って、カダヴァーがメロディック・ハードロック化するはずもなく、今回もカオティックでブルータルなデス・メタルをぶちかましている。まさにアンダース言うとおり、「世界の終末後のパーフェクトなサウンドトラック」だ。