89年、ダヴィッド・パーランド(G)とヨアキム・ステーナー(Dr)を中心に結成されたスウェーデンのネクロフォビック。残念ながら13年に亡くなってしまったダヴィッドだが、彼こそ後にロード・アーリマンと共にダーク・フューネラルを結成するブラックムーンその人。数本のデモを発表したのち、93年にアメリカのカルト・レーベル、ワイルド・ラグズ・レコードから『The Call』EPを、そしてスウェーデンのブラック・マーク・プロダクションズからデビュー・アルバム、『The Nocturnal Silence』をリリース。バンド名はモロにスレイヤーだが、サンライト・スタジオでの録音、トーマス・スコグスベリのプロデュースということから分かる通り、そのサウンドは基本的にスウェディッシュ・デス・メタルを踏襲したものであった。ただ、ブラックムーンが結成したバンドということからもわかるとおり、ネクロフォビックのスタイルはイーヴルさを持ち合わせたものであり、それが彼らのセールスポイントでもあった。96年に4曲入りEP『Spawned by Evil』をリリース。これにはヴェノム、スレイヤー、バソリーのカバーが収録されており、このことからもネクロフォビックのルーツがイーヴルなスラッシュ・メタルにある、つまり、いわゆるスウェディッシュ・デス・メタルとはその出自が違うのだ。
その後数々のラインナップ・チェンジを経つつも8枚のアルバムをリリース。そして2020年、9枚目のアルバム『ドーン・オブ・ザ・ダムド』をリリース。18年の前作『マーク・オブ・ザ・ネクログラム』は、初期のヴォーカリスト、アンデシュ・ストロキルクと中期のギタリストでメイン・ソングライターであったセバスティアン・ラムステッドがそれぞれ出戻りとなり、それまで在籍期間がかぶっていなかった両者の初顔合わせという意味でも興味深い作品であった。『ドーン・オブ・ザ・ダムド』でも、ベーシストこそ交代になっているものの、アンデシュ+セバスティアンのタッグは変わっていない。ブラック・メタル風味をまぶしたネクロフォビック流スウェディッシュ・デスメタルが炸裂している。