シックス・フィート・アンダーが結成されたのは93年。元々は当時カンニバル・コープスのヴォーカリストであったクリス・バーンズと、オビチュアリーのギタリスト、アラン・ウェストによるサイド・プロジェクトとしてスタートした。95年、カンニバル・コープスが所属していたメタル・ブレイドから、『Haunted』でアルバム・デビュー。プロデュースがブライアン・スレイゲルとスコット・バーンズという、まさに鳴り物入りのデビューであった。活発な活動を続けて行くうちに、だんだんとサイド・プロジェクトの枠には収まらなくなっていったシックス・フィート・アンダー。結果95年、『Vile』のレコーディングの最中に、クリスはカンニバル・コープスを解雇される。以降、シックス・フィート・アンダーが彼の本業となった。
クリスがシックス・フィート・アンダーを始めたのは、スピードに頼らないデス・メタルをプレイしたかったから。スラッシュ・メタルと違い、デス・メタルの本質はスピードには無い。むしろヘルハマーやケルティック・フロストがルーツの、ヘヴィでドロドロしたものこそが、デス・メタルのアイデンティティである。だが90年初頭、ブラストビートがシーンを席巻していたこともあり、「デス・メタル=高速ドラミング」という風潮ができあがりつつあった。そんな中、クリスはスロー〜ミッドテンポでグルーヴィーに押す、デス・メタルの本質に迫るバンドを始めたのだ。
オリジナル・メンバーはクリス1人だけになってしまったが、2020年にリリースの17枚目のアルバム、『ナイトメアーズ・オブ・ザ・ディコンポーズド』においても、その理念に一切の揺らぎはない。特筆すべきは、ジャック・オーウェン(G)が加入していることだろう。言わずと知れた、カンニバル・コープス初代ギタリストであるジャック。前作『Torment』リリース直後に加入した彼が、クリスの書いた歌詞に次々と曲をつけていったというのだから、まさに黄金コンビの復活である。