ミー・アンド・ザット・マンは、ポーランドのブラック・メタル・バンド、ベヒーモスのヴォーカリストであるネルガルことアダム・ダルスキのプロジェクト。もともとはジョン・ポーターというポーランド在住のイギリス人ミュージシャンとのコラボレーションとしてスタートした。ベヒーモスとは違う、アウトロー・カントリーやブルース風味の音楽を聴かせるこのミー・アンド・ザット・マンは、17年に『Songs of Love and Death』でアルバム・デビュー。リード・シングルとなった「My Church is Black」は、Spotifyで250万回を超える再生回数を記録するなど、特にヨーロッパで大きな話題になった。アウトロー・カントリーなどというと身構えてしまうメタル・ファンも少なくないかもしれないが、そのスタイルは―アダムの声質的にも―ニック・ケイヴやジョニー・キャッシュ、レナード・コーエン、トム・ウェイツといったアーティストに近いものだ。そもそもアウトロー・カントリーというジャンルや、ここに挙げたアーティストとヘヴィメタルの親和性は高い。エクストリーム・メタルのミュージシャンの中にも、これらのアーティストを敬愛するものは少なくなく、アダムもそんな中の一人なのだ。
18年、残念ながらアダムとジョンは袂を分かつ。様々な面で、意見の衝突があったようだ。だが、アダムは前進を選択。そして20年3月、彼のソロ・プロジェクトとなったミー・アンド・ザット・マンはセカンド・アルバム『ニュー・マン・ニュー・ソングス・セイム・シットVol.1』、21年11月にはサード・アルバム『ニュー・マン・ニュー・ソングス・セイム・シットvol.2』をリリース。
メタルではないが、アダムがこのプロジェクトで作り出す世界観は、エクストリーム・メタル、特にブラック・メタルのそれに非常に近く、ベヒーモスでは表現しきれないアーティストとしての欲求が、ミー・アンド・ザット・マンにあふれ出ている。