アヴェンジャーがドイツのヘルネにて結成されたのは1984年のこと。ピーター“ピーヴィー”ワグナー(ベース/ヴォーカル)、ヨルグ・マイケル(ドラムス)らの4人のメンバーでリリースしたデビュ・アルバム『プレイヤーズ・オブ・スティール』(1985年)では、NWOBHMからの影響を感じさせるパワー・メタルを展開していたが、レイジに改名して発表した第1弾アルバム『レイン・オブ・フィア』(1986年)ではスラッシュ・メタル・スタイルの楽曲を導入。さらに3作目の『エクセキューション・ギャランティード』(1987年)ではガット・ギターを使った曲やプログレッシヴ・ロック的な展開を入れるなど、独自のアレンジを施したスタイルを構築する。
間もなくして、ピーヴィーを除くメンバーが脱退し、新たにマンニ・シュミット(ギター)とクリス・エフティミアディス(ドラムス)を迎えトリオとなったバンドは4作目の『パーフェクト・マン』(1988年)をリリース。「ドント・フィア・ザ・ウィンター」を収録したこの作品ではキレのある演奏と攻撃性に加え、メロディックな側面を強く打ち出すと、スピード・チューンの「インヴィジブル・ホライズンズ」などを収録した5作目の『シークレッツ・イン・ア・ウィアード・ワールド』(1989年)、スピーディーでキャッチーな「サドル・ザ・ウィンド」などを収録した6作目の『リフレクションズ・オブ・ア・シャドウ』(1990年)をリリースし、バンドはじわじわと知名度を上げることになる。さらに全体的にパワー・アップを図りながら、洗練された作風になった7作目の『トラップド!』(1992年)ではアラビア風の旋律を取り入れた「シェイム・オン・ユー」やスピード・ナンバーの「ソリタリー・マン」、キャッチーな「イナフ・イズ・イナフ」、8作目の『ザ・ミッシング・リンク』(1993年)では「ネヴァーモア」「レフュージ」という名曲を生み出し、日本でも人気バンドとなる。
しかし、センス溢れるギター・プレイが評価されていたマンニが1994年に脱退ししたため、新たにスヴェン・フィッシャー(g)とクリスの弟のスピロス・エフティミアディス(g)を迎えたバンドは4人体制となり、結成10周年を記念して、これまでピーヴィーが書き溜めて未発表になった曲や既発曲をメドレー形式でプレイしたナンバーなどを収めた9作目の『テン・イヤーズ・イン・レイジ』(1994年)をリリース。
その後、同じメンバーで5枚のアルバムをリリースした後、バンドに変化を求めたピーヴィーは、元マインド・オデッセイのヴィクター・スモールスキ(ギター)と、トニー・マカパインやイングヴェイ・マルムスティーン等との活動で知られるマイク・テラーナ(ドラムス)を迎えたトリオで始動。この編成となってリリースした第2弾アルバム(通算16作目)の『ユニティ』(2002年)では、音楽の英才教育を受けて育ったヴィクターの高度な作曲能力や技巧派ギター・プレイを盛り込んだメロディック・メタルを披露し、「インサニティ」などアップ・テンポの曲を軸に、クワイアを導入した「ディエス・イレ」など、高尚な楽曲も収録。続く17作目の『サウンドチェイサー』(2003年)でも、タイトル曲の「サウンドチェイサー」をはじめ、起伏のあるメロディアスで活きのいい楽曲を並べ、アルバムは高い評価を得ることに成功する。さらにアルバム・リリース後に行なったヨーロッパ・ツアーの中から2004年1月のドイツ公演を収めたライヴ作品『フロム・ザ・クレイドル・トゥ・ザ・ステージ』(2004年)もリリースされ、パワフルでテクニカルなパフォーマンスも話題となったものだった。