エグゾーダーはニューオーリンズ出身のスラッシュ・メタル・バンド。結成は85年だが、『Slaughter in the Vatican』でアルバム・デビューを果たしたのは、90年になってから。92年にはセカンド・アルバム『The Law』を発表するが、何しろスラッシュ・メタルに逆風が吹き荒れていた90年代初頭のこと。どちらのアルバムも商業的な成功に恵まれることはなく、バンドは93年に解散。それだけならば、何てことのない、多少遅れてデビューしたスラッシュ・メタル・バンドにありがちな話で終わりだ。だが、エグゾーダーはその後20年以上に渡り、ヘヴィ・メタル界の論争の中心であり続けた。グルーヴ・メタルの元祖はエグゾーダーなのか。もっとストレートに言えば、「パンテラの元ネタはエグゾーダーなのか」という論争だ。
パンテラがパンテラらしいスタイルを確立したのが5thアルバム『Cowboys from Hell』であることは、周知の事実だろう。この作品がリリースされたのは、『Slaughter in the Vatican』と同じ90年のこと。そのあたりの時系列が非常に微妙なのだが、『Slaughter in the Vatican』はフィル・アンセルモによるプロジェクトだと偽れば、信じる人も少なくないであろうと思うくらい、両者の共通点は多い。いわゆるグルーヴィーなパートもそっくりだが、何よりカイル・トーマスとフィルの声質、節回しは酷似していると言わざるをえない。当時、知名度の差もあり、エグゾーダーはパンテラのフォロワーだという印象を持った人もいたことだろう。だが、実際影響下にあったのは、パンテラの方である。少なくとも、フィルがエグゾーダーの大ファンであったことは間違いない。彼は「リスペクトするエグゾーダーを他のメンバーにも聴かせた」と証言している。「エグゾーダーがグルーヴ・メタルを発明し、パンテラがそれを広めた」というが、現在の定説なのである。肝心の本人たちは、「パンテラが俺たちから影響を受けたかって?それは間違いない。パクリかと言われれば、まあそうかもしれないな。だけど、彼らは俺たちよりずっと頑張った。だから成功したんだ。それだけのことさ」と、外野の論争など意に介さず、潔いコメントをしている。
Exhorderは19年、27年ぶりとなるサード・アルバム『Mourn the Southern Skies』をリリース。世界中のファンを驚かせた。24年には、5年ぶり4枚目のアルバム。『Defectum Omnium』をリリース。前作よりもスラッシュ的、パンク的要素が増し、よりアグレッシヴな仕上がりとなっている。それもそのはず、本作でリード・ギターを担当しているのは、元Cannibal Corpseのパット・オブライエンなのだから!もちろん彼らお得意の、ドゥーミーでグルーヴィな展開も健在。グルーヴ・メタルの元祖の面目躍如たるアルバムとなっている。プロデュースを担当したのは、巨匠イェンス・ボグレン。