70年代終わりから80年代の始め、イギリスを中心に、当時としては尋常でないスピードで演奏するヘヴィ・メタル・バンドたちが登場。彼らはメタリカなどに大きなインスピレーションを与え、スラッシュ・メタル誕生への足がかりを作った。レイヴンもそんなバンドの1つである。74年にジョンとマークのギャラガー兄弟を中心に結成されたレイヴンは、81年に『Rock Until You Drop』でアルバム・デビュー。まさにスピード・メタルの元祖と言うべきアグレッシヴな内容で、キッズたちの心を鷲掴みにした。83年にサード・アルバム『All For One』をリリースした際には、デビューしたてのメタリカをサポートに従え、北米ツアーを行なっている。
アルバム・デビューからすでに40年になろうかというベテラン中のベテランのレイヴンであるが、ここ数年「最近のレイヴンは凄い!」という噂を耳にするようになった。彼らのライヴを見たものが、口を揃えて絶賛するのだ。それもそのはず、18年に30年間連れ添ったジョー・ハッセルヴァンダーが脱退、後任として加入したのがスーパー・ドラマー、マイク・ヘラーだったのだ。フィア・ファクトリーを始め、数々のテクニカル・デス・メタルに参加してきたマイクが加わったレイヴンが、往年のスピード・メタル・ナンバーを信じられないスピードでプレイしている訳だから、「最近のレイヴンは凄い」という噂も立ってしかるべき。
2020年9月、ついにそのマイクを迎えたニュー・アルバム『メタル・シティ』がリリース。82年の名盤セカンド・アルバム、『Wiped Out』のような作品だという触れ込みに、一切の偽りはない。とにかく速い。とにかくエネルギッシュ。数多くのバンドでプレイしてきたマイクは、ドラミングだけでなく、プロダクション、そしてマネジメントに至るまで、あらゆる点でレイヴンをアップデートした。レイヴンらしいリフ、レイヴンらしいハイトーン。そのすべてが21世紀のクオリティにパワーアップしている。『メタル・シティ』が往年のファンを歓喜させるのは当然。若い新規ファンの大量獲得も間違いなしだ。デビュー40年にして迎えた転機。これこそ新生レイヴンだ。