フランス語圏であるカナダのケベックは、なぜか一風変わったエクストリーム・メタル・バンドを輩出し続けている。Voivod、DBC、Gorguts、Cryptopsy、Martyr。いずれも強烈な個性を持ったバンドばかりだ。そんな系譜に属するのが、プログレッシヴ・テクニカル・デス・メタル・バンド、ビヨンド・クリエイション。05年にシモン・ジラール(ヴォーカル、ギター)を中心に結成された彼らは、11年に『The Aura』でアルバム・デビュー。
自主制作ながら、そのずば抜けたクオリティの高さで大きな話題となり、結果バンドはフランスのSeason of Mistとの契約を手にする。Season of Mistは、まず13年に『The Aura』を再発。続いて14年にはセカンド・アルバム『Earthborn Evolution』が発表され、ビヨンド・クリエイションの名は、世界中に轟いていった。ツアーにも熱心な彼らは、ここ日本にも2度やってきているから、その圧倒的演奏力を目の当たりにされた方も多いことだろう。
そして18年10月、サード・アルバム『アルゴリズム』を発表。シモンは「テクニカルさは減り、プログレッシヴさが増した」と表現しているものの、それはあくまでビヨンド・クリエイション基準での話。過去2作に比べれば、相対的にはシンプルなプレイになっているかもしれない。だが、一般の基準からすれば、彼らのプレイは十分すぎるほどテクニカル。そんな彼らの特長の1つが、弾きまくりのフレットレス・ベースであるが、15年、ベーシストのドミニクが脱退。今回新たにユーゴ・ドワイヨン・カルーが加入している。しかし心配ご無用。ユーゴもフレットレス・ベースをこれでもかと弾きまくり。ギターもドラムも相変わらずの手数の多さで、これで「テクニカル性減退」とは、彼らの基準は一体どうなっているのだろう。
テクニカルというと、とっつきづらい印象を持つ人も少なくないかもしれないが、ビヨンド・クリエイションにそんな心配は必要ない。もともと聞きにくさとは無縁であった彼らだが、『アルゴリズム』は輪をかけて親しみやすい作品に仕上がっている。ビヨンド・クリエイションにとって、テクニカル・プログレッシヴ・デス・メタルとは、「美しくプログレッシヴな楽曲を、しっかりとしたテクニックを持って演奏をする」という意味なのだ。