有数のメタル大国、フィンランドで抜群の人気を誇るヘヴィ・メタル・バンド、アモルフィス(Amorphis)。1992年にデビューした彼らの音楽は、当初はデスメタルの範疇に入っていたが、次第にフォーク/トラッド的要素やゴシック/プログレの要素などを取り入れつつ、独自の進化を遂げてきた。特徴的な翳りのある哀愁の歌メロやギターフレーズから、メランコリック・メタルなどとも呼ばれることもある。
アモルフィスは、1990年にフィンランドでエサ・ホロパイネン(G)とヤン・レックベルガー(Dr)が中心となって結成された。1992年5月、1stアルバム『The Karelian Isthmus』でデビュー。独自のデス・メタルが展開されるこの作品は、多くのメタル・ファンの熱い視線を浴びる。1994年には2ndにしてフィンランドの叙事詩カレワラに基づいたコンセプトアルバム『Tales From the Thousand Lakes』をリリースし、バンドは一気に評価を高める。1999年リリースの4thアルバム『Tuonela』から徐々にデスメタル色を薄め、ゴシック・メタル的要素を取り入れていくことにより、哀愁溢れる独特のヘヴィ・メタルを築き上げることに成功した。ヴォーカリストにトミ・ヨーツセンが加入し、2006年に発売されたアルバム『Eclipse』では、メタルのアグレッシヴな要素に民族的な旋律を見事に融合させ、世界中で高い評価を受けた。以後、『Silent Waters』(2007年)、『Skyforger』(2009年)、『The Beginning of Times』(2011年)、『Circle』(2013年)、『Under the Red Cloud』(2015年)と、次々に充実した作品を発表。本国ではナショナル・チャート上位の常連となっており、12作中4作が1位を獲得するなど、絶大な支持を受けている。ヨーロッパのみならず、日本でも高い人気を誇り、1996年の初来日公演以来、コンスタントにライヴを行っている。
2017年にベーシストの二クラス・エテレヴォリが脱退し、バンドは代役としてオリジナル・ベーシストのオーリ・ペッカ・ライネ(1990年から2000年までバンドに在籍)を迎えライヴを継続。そしてオーリは今回のアルバムに正式に参加している。
2018年5月には、13thアルバム『Queen of Time』をリリース。バンドの健在ぶりを示すどころか、さらに進化した姿を見せつけた傑作だ。ダークでメランコリックで美しいメロディ、ドラマティックな展開など、彼らの特徴的な要素が、すべての面でさらなる高みに達していることにリスナーは驚くだろう。印象的な歌メロにギターフレーズ、重厚なリズム隊、ノーマルとグロウルを自在に操るトミ・ヨーツセンのボイス等々、すべてが渾然一体となって美しく荘厳な音楽を奏でている。フォーク、メロディック・デスなどのメタル要素のブレンド加減もこれまで通り絶妙の巧さをみせている。
2021年5月、ライヴ・アルバム『ライヴ・アット・ヘルシンキ・アイス・ホール』をリリース。「子供の頃、ディープ・パープルやアイアン・メイデン、メタリカなんかを見に行った」というトミ・コイヴサーリ(G)の発言からも分かる通り、このライヴが行われたアイス・ホールというのは、ヘルシンキのメタル・ファンにとって聖地である。地元、そして由緒正しいホールでのライヴということで、アモルフィスの演奏にも一段と気合が入っているのがわかる。そんな特別な一夜にプレイされたのは、最新作『クイーン・オブ・タイム』からの楽曲を中心に全15曲。本作にはそのすべてが余すことなく収録されている。
22年2月には、アルバム『ヘイロー』をリリース。ヘヴィで、プログレッシヴで、時にエキゾティック。トミのグロウルとクリーンの使い分けも見事。そしてもちろん、アモルフィスらしい哀愁に満ちたメロディ満載。これぞアモルフィスといった文句なし、百点満点の仕上がりだ。