2001年に米国サンディエゴで結成。ブラック・サバスやレッド・ツェッペリンなどのハード・ロックからアシュラ・テンペル、グル・グルなどのジャーマン・プログレッシヴ、フラワー・トラベリン・バンドやブルース・クリエイションなど日本のニュー・ロックまで多彩な音楽スタイルのエッセンスを独自昇華させ、ライヴでの壮絶なインストゥルメンタル・ジャムで世界を席巻してきたのがアースレスだ。
ヘヴィなリフとスペーシーな浮遊感あふれるサウンドで熱狂的に支持され、2015年には日本公演も実現している。マリオ・ルバルカバ(ドラムス)、マイク・エジントン(ベース)、アイゼイア・ミッチェル(ギター)のトリオ編成で、マリオはロケット・フロム・ザ・クリプトやOFF!のメンバーとしても来日経験がある。
スタジオ・アルバムでも数十分におよぶロング・インストゥルメンタルをプレイしてきた彼らだが、通算4作目となる『ブラック・ヘヴン』(2018)はヴォーカル入りのナンバーを軸に据えてきた冒険作。これまでも「チェリー・レッド」(グラウンドホッグスのカヴァー)でヴォーカルを入れたことがあったが、本作では全6曲中4曲でアイゼイアが歌っている。ダイナミックな「ギフテッド・バイ・ザ・ウィンド」からグルーヴィな「エンド・トゥ・エンド」、哀感を込めた「サドゥン・エンド」まで、そのミュージシャンシップとソングライティングの両輪で驀進していく。深みのある歌詞はバンドの音楽性に新たなディメンションをもたらしている。
インスト・パートも迫力を増す一方だ。「エレクトリック・フレイム」後半のジャム、タイトル曲「ブラック・ヘヴン」では3人の妥協のないプレイが火を噴く。せめぎ合うファズとフィードバックは、まさに音楽によるトリップだ。
アースレスの新作は、聴く者の精神を変革させるヘヴィ・サイケ新時代の“知覚の扉” だ。