2002年にノルウェーにて元シルヴィア・ウェインのトッシーこと、トーシェル・ロズ(ヴォーカル)、エンスレイヴドのアイヴ・イスダルこと、アルヴェ・イスダル(ギター)、のちにドゥーム・メタル・バンドのサーグに在籍することになるトーマス・トフトハゲン(ギター)とトム・カロヴィスネス(ベース)とキュティル・グリーヴェ(ドラムス)によって結成されたオードリー・ホーン。90年代前半に大ヒットしたTVドラマ『ツイン・ピークス』に登場するローラ・パーマーのクラスメイト、オードリー・ホーンの名前をそのままバンド名にした彼らは、2枚のEPをリリースした後、アルバム『NO HAY BAND』(2005年)でデビューを果たす。
オルタナティヴ・メタルと呼べるような内容になったこの作品で手応えを掴んだバンドは、トムが脱退して4人で制作した2ndアルバム『LE FOL』(2007年)をリリースすると、次の3rdアルバム『オードリー・ホーン』(2010年)ではこれまでの雰囲気を残しながらよりメロディアスなスタイルを披露。さらに、ベースにエスペン・リーンを迎えた4thアルバム『ヤングブラッド』(2013年)ではキッスやシン・リジィのようなハード・ロックのテイストを盛り込んだスタイルへとシフトした彼らは、次の5thアルバム『ピュア・ヘヴィ』(2014年)ではシン・リジィ色が濃くなり、バンドも本来やりたかったというメロディックなハード・ロック・スタイルを確立する。
オードリー・ホーンはこれまでに6枚のアルバムをリリースし、作品を発表する毎に楽曲は洗練されてきたとの印象を受ける。一部のメンバーはブラック・メタル、エクストリーム・メタルのバンドに参加しているが、オードリー・ホーンの音楽はそれらとはかなりかけ離れている。クラシックなロック、それは初期のキッスやヴァン・ヘイレンにも通じる、ヘヴィでありつつメロディックなロックであったり、シン・リジィやUFOといった70年代ブリティッシュ・ロックのポップになりすぎない湿り気のある演奏、そしてブルースの要素を薄めたサウンドの感触は80年代初頭のNWOBHMをも匂わせたりする。元々、メロディのセンスが素晴らしく、英語で歌うトーシェルのメロディアスなヴォーカルが前面に出た作りになっている。どの曲にも耳に残る印象的なフックがあり、2本のギターが奏でる泣きのメロディなどバックの演奏と絶妙なバランスで成立している。