ネイ・オブリヴィスカリスは、オーストラリア・メルボルン出身のプログレッシヴ・エクストリーム・メタル・バンド。03年の4月、ヴォーカルのXenoyrを中心に結成。同年9月には現在ヴァイオリンとクリーン・ヴォーカルを担当するティム・チャールズが加入。初期の頃は、ソプラノの女性ヴォーカリストも在籍しており、当時から既存のエクストリーム・メタルの枠には収まらないスタイルを標榜していた。ちなみにネイ・オブリヴィスカリスとは、ラテン語で「忘れることなかれ」という意味である。
バンドとして初めて公に作品を発表したのが、07年のデモ『The Aurora Veil』である。あらゆるエクストリーム・メタルを飲み込み、極端なまでにプログレッシヴに仕上げた3曲入り、計33分にも及ぶこのデモは、「デモ」などと軽々しく形容するのがはばかられるクオリティを誇る。たった1本のデモで、ネイ・オブリヴィスカリスの名はエクストリーム・メタル・マニアの間に広まった。(このデモに収録された3曲が、すべてデビュー・アルバムに再録されているというのも、この時点でバンドのコンセプトが固まっていた証拠である。)Hail Spirit NoirにNegură Bunget、FenにThe Axis of Perditionと、一癖も二癖もあるエクストリーム・メタル作品を世に送り出し続けているイタリアのCode666 Recordsからデビュー・アルバム『Portal of I』をリリースしたのが、12年のこと。デモ発表後にリード・ギタリストが脱退をしたため、アルバム・デビューまで思いのほか時間がかかってしまったようだ。結成からアルバム・デビューまで9年というのは確かに長いが、ネイ・オブリヴィスカリスの場合、その9年間でミュージシャンシップやコンセプトを完璧に磨きあげ、満を持してデビューを果たしたと言える。7曲中5曲が10分超。この頃は現在よりもルーツであるブラック・メタルやデス・メタルからの影響が前面に出ているが、そこにヴァイオリン、そしてクリーン・ヴォーカルによる哀愁に満ちたメロディがガッツリと絡むスタイルは、まったく新しい世界観と言えるものであった。そんな訳で、オーペスやデヴィン・タウンゼンドなども経験し、プログレッシヴな作品に耐性を持ち始めていたエクストリーム・メタル・ファンも、ネイ・オブリヴィスカリスには再び驚愕せざるをえなかったのである。
その衝撃はここ日本にも伝わり、13年には初来日公演が実現。デビュー・アルバムが大反響を呼んだ結果、バンドはフランスの名門、Season of Mistとの契約を果たす。14年にはセカンド・アルバム『Citadel』をリリース。本作に伴うワールド・ツアーのために行われたクラウドファンディングでは、何と86,000オーストラリア・ドル(現在のレートで約750万円!)もの資金集めに成功。15年には早くも2度目の来日公演が行われた。
そして2017年、3年ぶりの3作目『アーン』がリリース。”Urn”、すなわち「骨壺」という随分と不吉な意味を持ったタイトルだが、もちろんネイ・オブリヴィスカリスの世界観は健在だ。美しいクリーン・ヴォーカル、華麗すぎるギターソロ、弾きまくりのヴァイオリン、おなじみのスパニッシュ風パートも登場する。