1999年から2015年までレイジに在籍し、レイジの音楽をテクニカルにかつ高尚に進化させたヴィクター・スモールスキ。旧ソビエト連邦、現ベラルーシで生まれた彼は、著名な作曲家である父ドミトリー・スモールスキの勧めにより、幼少の頃から音楽の英才教育を受けて育つと、大学ではギター、作曲、編曲の学士号を取得。1993年からドイツを拠点にミュージシャンとしての活動を開始し、メロディック・メタル・バンドのマインド・オデッセイでプロとしてのキャリアをスタートさせる。その後、1999年にレイジに加入し、『ユニティ』(2002年)や『サウンドチェイサー』(2003年)といった名作を残す一方で、ソロとしてもアルバム『デスティニー』(1996年)、『ザ・ヘレティック』(2000年)、『マジェスティ&パッション』(2004年)をリリース。卓越したギター・テクニックに加え、オーケストラのスコアも自ら書き起こすほどの音楽の知識を武器に、唯一無二の存在として活躍している。
そんなヴィクターが結成したアルマナックは、リングア・モーティス・オーケストラ(LMO)のコンセプトを引き継いだものだ。LMOというのは、ヴィクターが加入する前のレイジが1996年にリリースしたオーケストラとの共演アルバム『リングア・モーティス』から発展したプロジェクトで、2013年にはリングア・モーティス・オーケストラfeat.レイジ名義でアルバム『リングア・モーティス・オーケストラfeat.レイジ』をリリース。この作品はヴィクターが全曲の作曲とオーケストラ・アレンジを施した荘厳なメロディック・メタル・アルバムに仕上がっている。
2016年にリリースしたアルマナックの1stアルバムの『ツァー』は、『リングア・モーティス・オーケストラfeat.レイジ』に参加していたオーケストラ・バルセロナ・フィルハーモニア、女性シンガーのジャネット・マルヒェフカ(ヴォーカル)をそのまま起用してレコーディングを実施。アルバムはメロディックなパワー・メタルに要所でオーケストラを取り入れたスタイルの楽曲が並んでおり、ストーリーに合わせて、ピンク・クリーム69のデイヴィッド・リードマン(vo)、ブレインストームのアンディ・B・フランク(vo)と、タイプの異なるシンガーも参加していたのも特徴だ。
アルバム・リリース後、10ヵ国で50回を超えるライヴを行なった彼らは、バンドとしての手応えを掴むと、ジャネット、デイヴィッド、アンディの3人のシンガー、新加入のリズム隊と共に2ndアルバム『キングスレイヤー』を発表する。この作品でもオーケストラも交えつつ、前作以上に攻撃性のあるメロディック・パワー・メタルを展開すると、2017~2019年に新メンバーを迎えてライヴ活動を行ない、その新体制で3rdアルバムのレコーディングを実施。そして完成したのが、2020年3月にリリースされた、3rdアルバム『ラッシュ・オブ・デス』である。