ロックンロール誕生30周年を記念して1985年10月25日、カリフォルニア州アーヴァイン・メドウズ・アンフィシアターで行われたオール・スター・コンサートを収録したのが『ロックンロール・オール・スター・ジャム』(2010)である。
このスペシャル・ライヴの主人公として、ロックンロールのオリジネイターの一人であるボ・ディドリーは最も相応しいスーパースターだ。1928年12月30日、ミシシッピ州マコウム生まれのボは本名エラス・マクダニエル。1950年代に「ボ・ディドリー」「アイム・ア・マン」「フー・ドゥ・ユー・ラヴ」などのヒットを飛ばし、長方形ギターとリズミカルな“ボ・ディドリー・ビート”で一時代を築いた彼がいなかったら、ロック音楽の歴史はまったく異なったものになっていたに違いない。彼から影響を受けたアーティストといえばローリング・ストーンズ、エリック・クラプトン、ジミ・ヘンドリックスらの名前が真っ先に挙がるが、現存するあらゆるロック・アーティストは直接・間接的にボから影響されているといっても過言でない。2008年6月2日に彼は亡くなってしまったが、その音楽は永く聴かれ続けるだろう。
そしてもう一人、ボと並んでロックンロールの歴史において最も重要なアーティストが、チャック・ベリーだ。1926年10月26日、ミズーリ州セントルイス生まれの彼が50年代に発表した「ジョニー・B・グッド」「ロール・オーヴァー・ベートーヴェン」「ロックンロール・ミュージック」「スウィート・リトル・シックスティーン」などは永遠のロックンロール・スタンダードであり、ロック・ファンだったら彼の名を知らない者などいない。彼もまた、2017年3月18日90歳で亡くなっているが、今もなおワン&オンリーの存在感を放っている。
ボとチャックは同じ『チェス・レコーズ』に所属していたことがあり、1964年には『トゥ・グレイト・ギターズ』というコラボレーション・アルバムを発表したこともある。友人でもある2人の持ち歌の共演ヴァージョンや10分以上におよぶジャム・セッションを収録したこのアルバムは、正直彼らの代表作とは言い難い作品ではあるものの、ロックンロールの歴史そのものといえる2人の普段とは異なるプレイを聴くことが出来る貴重なものだ。