1973年、ディープ・パープルに加入したとき、デヴィッド・カヴァーデイルは22歳の若者だった。世界最大のハード・ロック・バンドのシンガーとなった彼は大観衆を前にステージに立ち、『紫の炎』(1974)、『嵐の使者』(1974)、『カム・テイスト・ザ・バンド』(1975)という3枚のアルバムに参加。ロック界のトップ・ヴォーカリストへと成長していく。
バンド解散後にホワイトスネイクを結成、『サーペンス・アルバス(白蛇の紋章)』(1987)が全世界で1,000万枚を超えるセールスを記録し、自らが世界のトップ・アーティストとなった。しかし、彼は古巣ディープ・パープルを忘れることなく、ホワイトスネイクのライヴでは「幸運な兵士」「紫の炎」「嵐の使者」などがお馴染みのナンバーとして披露されている。
2007年にはデヴィッドとジョン・ロード、グレン・ヒューズが集まり、第3期ディープ・パープルの再結成に向けての話し合いを持ったが、実現することがなかった。その後、ジョンが2012年に亡くなったことで、この計画は夢に終わってしまう。
だが、そのことはデヴィッドとリッチー・ブラックモアを再び結びつけることになった。彼らは連絡を取り合い、共演プロジェクトが実現寸前となる。このことで、デヴィッドの中のディープ・パープルへの情熱と敬意が再燃。多大な影響を受けてきた偉大なる先輩たちへの感謝の念を込め、デヴィッドの原点である第3期ディープ・パープルのクラシックスをホワイトスネイクとして再演、新たな生命を吹き込むことになったのが、2015年リリースの『ザ・パープル・アルバム』である。
そして2019年には、40年以上におよぶバンドの軌跡の集大成といえる、8年ぶりとなるオリジナル・アルバム『フレッシュ・アンド・ブラッド』をリリース。ジョエル・ホークストラ&レブ・ビーチのギター・チームが作曲に関わる初の作品となる。
『ザ・パープル・アルバム』に伴うワールド・ツアーで引退も考えたというデヴィッドだが、“情熱”と“衝動”に燃え上がる新作で還ってきた。かつて“ヒア・アイ・ゴー・アゲイン=もう一度旅立とう”と歌った彼が、新たな出発に向かう。