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リッチー・ブラックモア(ギター)、ジョン・ロード(キーボード)、イアン・ペイス(ドラムス)を演奏の核に、第一期(68〜69年)はロッド・エヴァンス(ヴォーカル)とニック・シンパー(ベース)、第二期(69〜73年)はイアン・ギラン(ヴォーカル)とロジャー・グローヴァー(ベース)を擁する編成で英国ハード・ロック界のトップに君臨してきたのがディープ・パープルだ。とりわけ、第二期においてはギランの強力なハイトーン・シャウトと、クラシックの要素をも華麗に取り入れた轟音型のロックによって「ハイウェイ・スター」「スモーク・オン・ザ・ウォーター」といったキャッチーな名曲をヒットさせるなど、まさに黄金期と呼べる華々しい活動を展開した。
そんな黄金期も長くは続かず、バンド内の分裂が原因でギラン、グローヴァーの脱退劇へと発展、バンドは一気に終息するかにみえたが、当時は無名の歌手デヴィッド・カヴァーデイルと元トラピーズのグレン・ヒューズ(ベース兼ヴォーカル)を新メンバーに迎えることで不死鳥のごとく復活。第三期に当たるこのラインナップでは、『紫の炎』(74年)で、それまでの代表作『ファイアボール』(71年)、『マシン・ヘッド』(72年)をも凌ぐほどの勢いをみせている。従来のハード・ロックはそのままに、シンセサイザーの実験的な音やファンキーでメロウな要素を取り入れたスタイルは賛否両論を巻き起こしたが、それだけ彼らの存在が大きなものだったともいえるだろう。
その後バンドは1976年に解散するが、それぞれのメンバーは別バンドで活躍、そして1984年、彼らは黄金期のラインアップで再結成。アルバム『パーフェクト・ストレンジャーズ』をリリースしている。
再結成以降メンバーチェンジを繰り返しながらも、世代と国境を超えて愛されてきた彼らは無数のフォロワーを生み、そのDNAは世界のロック界に散りばめられている。 2020年8月には21作目となるオリジナル・アルバム『ウーッシュ!』をリリース。イアン・ギラン(ヴォーカル)が熱いシャウトを聴かせ、スティーヴ・モーズ(ギター)とドン・エイリー(キーボード)が卓越したテクニックを披露。唯一のオリジナル・メンバーであるイアン・ペイス(ドラムス)がスウィング感あふれるビートを叩き出し、ロジャー・グローヴァー(ベース)がタイトなベースラインを奏でる。バンド史上最長となったラインアップによる作品は、その軌跡の集大成と呼ぶに相応しいものとなっている。