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1986年にアルバム『レイン・オブ・フィアー』でデビューを果たしたドイツ産メロディック・パワー・メタル・バンドのレイジ。1984年にドイツでピーヴィー・ワグナー(vo, b)が中心となってアヴェンジャーという名前で結成されたこのバンドは、1枚のアルバムをリリースした後にレイジと改名。これまで幾度となくメンバー・チェンジを繰り返してきたこのバンドだが、ヴィクター・スモールスキを迎えた1999年以降、しばらくは安定期が続いていた。音楽の英才教育を受けて育ち、テクニカルなギター・プレイヤーとしても知られるヴィクターがバンドに持ち込んだ緻密でテクニカルな音楽はバンドを大きく進化させ、『ユニティ』(2002年)や『サウンドチェイサー』(2003年)といった力作を生み出すことに成功。さらにヘヴィでアグレッシヴになった21作目の『21』(2012年)も高い評価を得たものの、その裏で数年前からバンド内の人間関係は崩壊しており、ツアーもかなり悪い雰囲気の中で行なわれていたという。
そうした状況を打破するために、ヴィクターと当時のドラマーのアンドレ・ヒルガースを解雇したピーヴィーは、SOUNDCHASERというメロディック・メタル・バンドで活動する一方で、ドイツでスタジオ・ミュージシャンとしても活動していたマルコス・ロドリゲス(g, vo)と、元レイジのドラマーのクリス・エフティミアディスの教え子で、2014年秋からレイジのマネージャーを務めていたヴァシリオス“ラッキー”マニアトプロス(ds, vo)という気心が知れた2人を迎え入れ、2015年11月からヨーロッパ・ツアーをスタート。このツアーを通じて手応えを掴んだバンドは、その流れのまま『ザ・デヴィル・ストライクス・アゲイン』を発表。原点回帰したようなエネルギッシュなナンバーが揃ったこの作品が大きな話題になる中、 “LOUD PARK 16”に参加して新生レイジの魅力を存分に披露した彼らは、2016年12月までヨーロッパ・ツアーを実施。2017年には、アルバム『シーズンズ・オブ・ザ・ブラック』、2020年には新体制となって3作目となるアルバム『ウィングス・オブ・レイジ』をリリースした。
さらに2020年には、レイジのバック・カタログ12タイトルがリイシューされ、前身バンドのアヴェンジャーの唯一のアルバム『プレイヤーズ・オブ・スティール』(1985年)を含む初期のアルバム9タイトルと、ヴィクター・スモルスキを迎えたトリオ時代の3タイトルが最新リマスターでリリースされた。
その後、再びトリオ体制に戻りアルバム。『Afterlifelines』をリリース。結成から40年目に制作された記念すべき作品ということで、2枚組の大作となっているというのだから、ファンにはたまらない。疾走する楽曲にRage特有のメロディ。そしてお馴染みのフル・オーケストラの参加。まさに彼らの長い歴史のすべてが詰まっている作品だ。これぞジャーマン、これぞRage。心ゆくまで彼らの世界を楽しむことができる超大作。