ヴェノモス・コンセプトは2004年、ナパーム・デスのシェイン・エンバリー(ベース)とダニー・ヘレーラ(ドラムス)、ブルータル・トゥルースのフロントマン、ケヴィン・シャープ(ヴォーカル)、そして彼らの盟友であるメルヴィンズのバズ・オズボーン(ギター)という鉄壁のラインナップで結成、それぞれのバンドでの活動の合間を縫ってスタートした。各メンバーのルーツである“1980年代のハードコア・パンクを再現”をコンセプトに、ブラック・フラッグやポイズン・アイディアといったオリジネイター/第1世代のハードコア・スタイルを、第2世代の牽引者である彼らがプレイする、というものであり、ハード・ロック・バンドやメタル・バンドがディスチャージをカヴァーしたり“パンク・スタイル”をプレイするのとは異なる。リアルなハードコア・パンクで育ち、その本質を知り、リスペクトする彼らが心から楽しむために結成されたプロジェクトなのである。結成された2004年にマイク・パットン(フェイス・ノー・モア)が主宰するイペキャック・レコーディングスからリリースされた1stアルバム『レトロアクティヴ・アボーション』は、それを証明するかのように、シージやスカンディナビアン・ハードコアを思わせるトラディショナルなグレースケールのカヴァー・アートで登場。ジャパニーズ・ハードコア直系のドライヴィンなスタイルから、ヘレシーなどを想起させるプレ・グラインドコアのフィーリングを持つファスト・チューン、そして彼らがこれまでにカヴァーを披露してきたMDCやデッド・ケネディーズに通じるブラック・ユーモアまでを網羅し、かつそれぞれのキャリアと貫禄が滲み出る傑作となった。その勢いのままに2年後の2006年にはレイト90s〜00s最強の東京グラインドコア、324とのスプリット作『Making Friends Vol.1』を名門HG Factよりリリース。このスプリット相手やレーベルのセレクトからも、彼らのパンク・スピリットを窺うことができる。
2008年にはオズボーンが脱退。エンバリーが担当楽器をギターにシフトし、ベーシストとしてミスター・ブルータル・トゥルース、ダニー・リルカーが加入。完全にナパーム・デスとブルータル・トゥルースのハーフ&ハーフとなった彼らは、独センチュリー・メディア・レコーズより2ndアルバム『ポイズンド・アップル』をリリース。前作から一転してキッチュかつシニカルなカヴァー・アートとなっているものの音楽スタイルはそのまま継続し、ナパーム・デスとの縁も深い英国ハードコア・パンクのレジェンド、エクストリーム・ノイズ・テラーのオリジナルシンガー、フィル・ヴェインがゲストで参加し世界中のハード・コアファンを喜ばせた。さらに同年にはオーストラリアの名物ロッキン・グラインド、ブラッド・ダスターとのスプリット作をリリース、そして2年後の2010年にはヴェノモス・コンセプトとして日本初上陸。ナパーム・デスとのジャパン・ツアーを敢行している。
2014年のナパーム・デス来日公演でミッチ・ハリスの代役を務めたギタリスト、ジョン・クークが加入し、5人体制となったヴェノモス・コンセプト。2016年、3作目となる『キック・ミー・シリー VC III』をリリース。2020年には、4作目となる『Politics Versus the Erection』をリリースしている。