アモラルはヘヴィ・メタル大国フィンランドの首都ヘルシンキの出身。2004年にアルバム「WOUNDED CREATIONS」でデビューを果たした彼らは、フィンランド出身の新世代スラッシュ/デス・メタル・バンドの1つとして当時からかなりの注目を集めていた。日本でも当初よりメタル・ファンからの支持は高く、チルドレン・オブ・ボドムの後に続くべき期待の新星といった見方をされていた。彼らは順調に活動を続け「DECROWNING」(2005年)、「REPTILE RIDE」(2007年)といったアルバムを発表、音楽の攻撃性を更に推し進めながらも、よりテクニカルでプログレッシヴなアプローチを取り込むなど、創造面に磨きをかけることにも意欲的な姿勢を見せ続けていた。そんな中、2008年、アルバム・デビュー以前からフロントマンを務めてきたニコ・カリオヤルヴィが個人的な事情を理由にバンドから脱退、アモラルはしばらく活動を停止して沈黙を守った。
そして2008年11月、驚きのニュースが報じられた。ニコの後任として、フィンランドのタレント発掘番組『IDOLS』の優勝者で、2007年にアルバム「FUEL FOR THE FIRE」でデビュー、地元でアイドル歌手として活動していたアリ・コイヴネンのアモラルへの加入がアナウンスされたのだった。アリはニコがアモラルから離脱したことを知り、かねてよりバンドのファンだったことから「自分が加わりたい」とアプローチ、バンドとしてもヴォーカル/メロディ面でより多彩なスタイルを目指していたことから彼の申し出を受けてバンドの新しいシンガーとして迎え入れることを決めたのだった。
「デス/スラッシュ・メタル・バンドにアイドル歌手が加入する」という驚きのニュースには否定的な反応も寄せられたのだが、アリは元々熱心なヘヴィ・メタル・ファンであり、実のところの多様なヴォーカル・スタイルの持ち主だった。アリ加入後のアモラルは「SHOW YOUR COLORS」(2009年)、「BENEATH」(2011年)、「FALLEN LEAVES & DEAD SPARROWS」(2014年)といったアルバムをコンスタントに発表、当初は「メタル・バンド+アイドル歌手」といった側面に耳目が集まったが、新生アモラルは創造面においてアルバム毎に更なる進歩を遂げるようにもなっており、狭義のデス/スラッシュ・メタルという枠組みから飛躍、フィンランドを代表するプログレッシヴ/ヘヴィ・メタル・バンドとしての認知を得るようになった。
そして歳月を経た2015年3月、彼らはまたもや驚きのニュースを公表した。かねてよりバンドのショウに飛び入りしていたニコ・カリオヤルヴィのヴォーカリスト兼ギタリストとしての復帰を発表、今後アモラルは6人編成で活動していくことが明らかとなった。バンド・サウンドのこれまでのキャリアにおいて着実に経てきた進取性を保持しつつ、初期のデス/スラッシュ・メタルの原始的で衝動的なエネルギーを再び取り戻した新生アモラルだ。