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82年に結成されたデストラクションは、84年『Sentence of Death』EPでデビュー。翌85年にリリースされた初のフルレングス『Infernal Overkill』は、後のブラック・メタルやデス・メタル、さらにはグラインドコアの誕生にも大きな影響を与えた歴史的金字塔だ。続く『Eternal Devastation』(86年)も、名盤の呼び声が高い傑作である。だが、80年代後半から90年代初頭にかけてのスラッシュ・メタル暗黒時代は、デストラクションにも暗い影を投げかけた。89年、バンドの顔でもあるヴォーカリスト/ベーシストのシュミーアが脱退。残されたメンバーはデストラクション名義での活動は継続するも、シュミーアを欠いたデストラクションは迷走を余儀なくされた。シュミーアが戻ってきたのが、脱退から10年後の99年。00年の『All Hell Breaks Loose』を皮切りに、7作目『The Antichrist』(01年)、8作目『Metal Discharge』(03年)、9作目『Inventor of Evil』(05年)、10作目『D.E.V.O.L.U.T.I.O.N.』(08年)、11作目『Day of Reckoning』(11年)、12作目『Spiritual Genocide』(12年)、13作目『Under Attack』(16年)といった作品をコンスタントなペースで発表している。
さらに17年10月、初期楽曲の再録音アルバム第2弾『Thrash Anthems II』を発表。ファンの投票によって選曲がなされ、それを基本として再録音曲が選ばれている。
2019年8月には、14作目『Born to Perish』を発表している。『Born to Perish』は新生デストラクションの第一歩となる作品だ。曲作りの要であるシュミーアとマイクの2人は今も結束が固く、コア・メンバーであることに変わりはないが、ドラマーに関してはスヴェン・ヴォーマン(99年〜01年)、マーク・レイン(02年〜10年)、ヴァーヴェル(10年〜18年)、ランディ・ブラック(18年〜現在)といったように複数の人物が関わってきている。さらに驚くべきは、ギタリストをもう1人加えたことだ。デストラクションはトリオであることをポリシーにしていたバンドであり、実際に20年近く3人で活動をしてきた。しかしシュミーアは「ずっともう1人ギタリストを加えたいと思っていた」と、あっさり翻している。
20年7月には、ライヴ・アルバム『ボーン・トゥ・スラッシュ』を発表。87年の傑作『Live without Sense』に始まり、『Alive Devastation』(03年)、『The Curse of the Antichrist - Live in Agony』(09年)と、ライヴ・アルバムはデストラクションのお家芸という感もあるが、この作品は2019年8月10日ドイツの大型野外フェス、パーティー・ザン・メタル・オープン・エアーでのステージ模様をフル収録したもの。『Born to Perish』リリースの翌日で、まさにリリース・パーティといった様相のステージとなっている。
35年を超える精力的な活動を通じ、彼らが後続のバンドに与えた影響の大きさは我々の想像を遥かに超えていると言える。ヴェイダー、ディフレッシュト、マーダックなど、デストラクションをカバーしているバンドは枚挙に暇がない。彼らがスラッシュ・メタルという一つのフィールドにとどまることはない。