スコーピオン・チャイルドは2006年結成、テキサス州オースティン拠点のバンド。多種多様な音楽的背景を持つミュージシャンの集合体がこのスコーピオン・チャイルドであるが、彼らが結成当初より指向していたのは70年代型のブルーズ・ベースのハード・ロックだった。そもそも彼らの嗜好は多岐に亘り、80年代に生まれたスラッシュ/スピード・メタルや、イギリス/ヨーロッパのロック/ハード・ロック/ヘヴィ・メタルだけでなく、プログレッシヴ・ロックやハードコア・パンク、エクストリームなバンド達、更にはサザン・ブルーズ等々、ありとあらゆるものを咀嚼吸収してきている。スコーピオン・チャイルド以前、各メンバー達は全く異なるタイプの音楽をプレイしていた時期もあったのだが、スコーピオン・チャイルドとしてあくまでも見据えていたのは、ヘヴィにもブルージーにもサイケデリックにも変容出来る生粋のロックだった。
2012年、バンドの評判を聞きつけたドイツの『Nuclear Blast Records』が彼らにアプローチ、両者の間でアルバム契約がまとまった。やがてはバンド全体でテネシー州ナッシュヴィルのスタジオに籠って曲作りに励むことになったのだが、その流れのまま彼らはレコーディングを開始、そして完成を見たのが2013年発表の記念すべきデビュー・アルバム『スコーピオン・チャイルド』である。新人離れした完成度を誇る楽曲群はもちろんのこと、バンド全体の演奏力の高さやアーリンの抜群の歌唱力といった点においても高く評価され、『Billboard』の新人チャート『Heatseekers』に初登場26位を記録、更には英国の雑誌『Classic Rock』にて2013年のベスト新人バンド部門にノミネートされた。
2014年にショーン・アヴァンツ、トム・フランク(ギター)、ショーン・ポール・アルヴィアー(ドラムス)の3人が相次いでバンドを脱退してしまった。アーリンとクリストファー・ジェイ・カワート(ギター)の2人は後任メンバー探しに奔走、ジョン“チャーン”ライス(ドラムス/元JOB FOR A COWBOY)、アレック・カバレロ・パドロン(ベース)、アーロン・ジョン“AJ”ヴィンセント(オルガン、キーボード)という3人をリクルートした。これまでツイン・ギター編成の5人組だったのが、シングル・ギターでキーボード奏者のいる5人編成に生まれ変わったのだった。
新たなラインナップとなったスコーピオン・チャイルドは、2015年末からセカンド・アルバムのための曲作りを開始、11月にはアルバムに先駆けて7インチ・シングル「シー・シングス、アイ・キル」を発表。そして2016年3月にはリリースに向けてアルバムがほぼ完成していることがアナウンスされ、6月に『アシッド・ルーレット』をリリース。プロデューサーを務めたのは前作から引き続きクリス“フレンチー”スミスである。