長年のメタル・ファンにはお馴染み、カナダが誇る女性メタルシンガー、リー・アーロン。5歳の頃から歌を習っていたというリーは、その歌唱力を武器にバンド活動を開始。アンヴィルなども所属していたカナダのアティック・レコードと契約しリリースした84年のアルバム『Metal Queen』は、そのタイトル通り、彼女をメタルの女王の座へと押し上げた。その後も『Call of the Wild』(85年)、『Lee Aaron』(87年)とコンスタントにアルバムをリリース。ドロ・ペッシュとともに、女性ハードロック/ヘヴィメタル・ヴォーカリストの地位を築いていった。89年の『Bodyrock』は地元カナダでダブル・プラチナム・アルバムとなる大ヒットを記録。1990年には来日公演を敢行し、テレビ番組にも出演を果たしている。2021年12月には、リーの念願だったクリスマス・アルバムをリリース。パンデミックという暗い時代に灯をともす、実に美しく明るいアルバムだ。
22年11月にはアルバム『エレヴェイト』をリリース。ビッグなギター・フック、パワフルでブルージーなヴォーカル、そしてリッチなメロディとハーモニー。いつも通りほぼライヴ形式でレコーディングされたという本作は、ファンが彼女に期待するであろうものがすべて詰まった作品である。SNS等のせいで人々の分断が進む世の中。そんなものに惑わされず、お互いを持ち上げ(エレヴェイト)、高めあっていこうという、実に彼女らしいポジティヴなメッセージが込められた作品でもある。
2024年4月にはアルバム『Tattoo Me』をリリース。16年の『Fire and Gasoline』以降、『Diamond Baby Blues』(18年)、『Power, Soul, Rock N' Roll: Live in Germany』(19年)、『Almost Christmas』(20年)、『Radio On!』(21年)、『Elevate』(22年)と怒涛のリリース・ラッシュを続けて来た彼女であるが、今回の作品はキャリア初の試みであるカヴァー・アルバム。Led Zeppelin、Heart、Elton John、Alice Cooper、Nina Simoneなどの王道から、イギリスのElastica、カリフォルニアの77s等に至るまで、実に幅広い興味深い選曲がなされている。リー・アーロンというシンガーを作り上げた数々の名曲が、彼女のパワフルな歌声によって、新たな命を与えられている。