マーシフル・フェイトが後続のバンド、特にエクストリーム・メタル系の潮流に与えた影響の大きさは、ブラック・サバスのそれに匹敵するのではないか。メタリカがカバーを披露するほどのマーシフル・フェイト・フリークであることは良く知られているし、元メガデスのデイヴ・ムステインも影響を受けたバンドの筆頭として、彼らの名を挙げていた。スレイヤーがセカンド・アルバム『Hell Awaits』で大作主義に走ったのも、マーシフル・フェイトに影響を受けたからだ。試しに「Captor of Sin」のイントロと、マーシフル・フェイトの「A Corpse without Soul」のイントロを聴き比べてみると良い。この時期のスレイヤーがどれほどマーシフル・フェイトに傾倒していたのかがよくわかるはずだ。直接的であれ間接的であれ、マーシフル・フェイトから影響を受けていないエクストリーム・メタル・バンドなど、この世に存在しないのである。
EPと二枚のアルバムをリリース後、85年にマーシフル・フェイトは解散。ヴォーカリストのキング・ダイアモンドは、自身の名を冠したバンドを結成し、その音楽性、イメージを継承していく。87年にリリースされたセカンド・アルバム『アビゲイル』はまるで一本のホラー映画大作かのようなコンセプト・アルバムの傑作であり、以降コンセプト・アルバムはキング・ダイアモンドの代名詞となっていく。
2021年8月には、マーシフル・フェイトの作品がまとめて再発。『マーシフル・フェイト』EP(82年)、『メリッサ』(83年)、『ドント・ブレイク・ジ・オース』(84年)、『ザ・ビギニング』(87年)、『リターン・オブ・ザ・ヴァンパイア』(92年)の5枚。中でも『マーシフル・フェイト』EPが単独、かつ82年当時のアートワークでリリースされたのだから、マニアにもたまらない。