フランス初のデス・メタル・バンドと言えば、このラウドブラストだ。その結成は85年にまでさかのぼる。多数のデモを発表したのち、89年に『Sensorial Treatment』でアルバム・デビュー。この時点では、まだデス色はありつつも、スラッシュ・メタルの範疇でくくれる作風であった。大きな転換点となったのが、セカンド・アルバム、『Disincarnate』。フロリダやスウェーデンを中心に、世界中でデス・メタルの嵐が吹き荒れていた91年にリリースされたこの作品は、フロリダの聖地モリサウンド・スタジオで、デス、モービッド・エンジェル、ディーサイド、カンニバル・コープス、オビチュアリーなどの名作を多数生み出したスコット・バーンズをプロデューサーに迎え制作された。本作は、フランス初のデス・メタル・アルバムと言える記念碑的アルバムである。続く93年のサード・アルバム、『Sublime Dementia』も、やはりスコット・バーンズと共にモリサウンド・スタジオでレコーディングされ、ラウンドブラストはフランスを代表するデス・メタル・バンドの地位を確固たるものにしていく。だが、90年代のメタル暗黒期の煽りを受けた彼らは、4枚目のアルバム『Fragments』(98年)でニュー・メタルへと色気を見せつつ、99年に解散。02年には本格的な復活を果たし、その後はデス・メタル・バンドとしての信念を貫き続けている。
2020年には、8枚目のアルバム、『マニフェスト』をリリース。本作でベースを弾いているのは、フレデリク・ルクレールだ。元ドラゴンフォース、現クリエイターのフレデリクであるが、彼はこれまでも同郷の大先輩、ラウドブラストのライヴでベースを弾くことがあった。また、元スリップノットのジョーイ・ジョーディソンやメイヘムのアッティラ・チハーをフィーチャ、フレデリクがリーダーを務めるスーパースター・デス・メタル・バンドでギターを弾いているのは、ラウドブラストのステファン・ビュリエ。もともとラウドブラスト・ファミリーとも言える存在であったフレデリクが、2020年やっと正式メンバーになったという訳だ。サウンドの方はもちろんハイ・クオリティの正統派デス・メタル。80年代終わり〜90年代初めの古き良き時代のデス・メタルを現代のプロダクションで再現した、フレンチ・デス・メタルのパイオニアの面目躍如たる堂々たる仕上がりだ。
2024年11月に、4年ぶりのニュー・アルバム『Altering Fates and Destinies』をリリースする。本作でも古き良きオールドスクール・デス・メタルが炸裂。ブルータルながら、どこかキャッチーな素晴らしい楽曲群は、フランスにLoudblastありと高らかに宣言しているかのようだ。ベースを担当しているのは、前作に引き続きフレデリク・ルクレール。みなさんご存知Kreator、元DragonForceの、あのフレデリクである。Kreatorでもミレの右腕として大活躍を見せている彼は、ここでもリーダー、ステファン・ビュリエを全面的にサポートしている。アメリカのデス・メタル・バンド、Necrophagiaのカバーを収録しているのも渋い。