自らマーダー・メタル・バンドを名乗るイリノイのマカーブル。見落とされがちではあるが、彼らはデス・メタルのオリジネイターの1つと目される重要な存在。その結成は81年にまでさかのぼる。87年にリリースされた自主制作EP『Grim Reality』は、アンダーグラウンドのマニアたちを熱狂させた衝撃作。当時としては凄まじいスピードの楽曲。アルバート・フィッシュ、サン・オブ・サム、エド・ゲインといったシリアル・キラーを題材とした歌詞。(だからマーダー・メタルなのだ。)さらに童謡などを取り入れユーモラスな雰囲気も漂わせる世界観は唯一無二のもの。
89年には『Gloom』でアルバム・デビュー。続くセカンド・アルバム『Sinister Slaughter』(93年)は大手レーベル、ニュークリア・ブラストからのリリースとなった。その後は『Dahmer』(00年、ジェフリー・ダーマーについてのコンセプト・アルバム!)、『Murder Metal』(03年)、『Grim Scary Tales』(11年)と寡作ながらもクオリティの高い作品を発表し続け、カルト的人気を誇ってきた。2020年には、9年ぶりアルバム『カーニヴァル・オブ・キラーズ』をリリース。
27年ぶりのニュークリア・ブラスト復帰となる『カーニヴァル・オブ・キラーズ』は、「殺人鬼のカーニヴァル」というタイトル通り、相も変わらずテッド・バンディ、フリッツ・ハーマン、リチャード・ラミレスといったクラシックなシリアル・キラーまみれ。そして中身はもちろんスピーディ、テクニカル、キャッチー、ユーモラスと、いつも通りのマカーブル。アートワークから歌詞、音楽、アーティスト写真に至るまで、デビューから30年以上、あらゆる点において自分たちの世界観を貫き続けている。