年季の入ったスラッシュ・ファンであれば、アイアン・エンジェルの名を知らぬはずはない。ドイツ出身の彼らは83年に結成され、数本のデモをリリースした後、85年に『Hellish Crossfire』でアルバム・デビュー。本作はスピード/スラッシュ・メタルの傑作であり、ジャーマン・メタルの香りも感じられるため、ここ日本でもファンは多い。本国ドイツには、このアルバム・タイトルを冠した若手スラッシュ・バンドも存在するほどだ。翌86年にはセカンド・アルバム『Winds of War』をリリース。この作品は、リッチー・ブラックモアの息子、ユルゲン・ブラックモアがゲスト参加したことで話題になったことをご記憶の方もいるだろう。だが、本作をリリースした直後、バンドは解散してしまう。
多くのスラッシュ・メタル・バンドがシーン復帰を果たした90年代後半。アイアン・エンジェルもご多聞に漏れず、97年に再結成。10年に渡り活動を続けたが、納得のいくメンバーを揃えられなかったこともあり、この時は新作を制作することなく07年に再解散。
彼らがまたまたシーンに戻って来たのが15年のこと。この再々結成では多くのツアーもこなし、18年には32年ぶりとなる新作を発表。往年のファンを喜ばせた。19年には奇跡の初来日も果たしている。
2020年、4枚目となるニュー・アルバム『エメラルド・アイズ』がリリース。「過去と現在を融合し、未来を見据えた作品」と彼が描写するこの作品は、明らかに『Hellish Crossfire』を意識した作風。名作『Hellish Crossfire』でプレイしていたギタリスト2人は、残念ながらすでに鬼籍に入っていることもあり、現在オリジナル・メンバーはヴォーカルのダーク・シュローダーのみ。だが、ダークが歌えばアイアン・エンジェルになってしまうのも、また事実。スピーディでスラッシーだが適度にメロディック。相も変わらずドイツの香りをプンプンと漂わせる本作を聴いていると、まるで30年前にタイムスリップしたかのような気分になる。
アグレッシヴでありつつドイツのバンドらしいメロディをふんだんに聞かせるそのスタイルは、日本のファンの琴線に触れること間違いなし。