ウリ・ジョン・ロートの実弟、ジーノ・ロート。残念ながら2018年2月、61歳の若さでこの世を去ってしまったジーノだが、彼が生み出した美しい曲の数々は、我々に感動を与え続けている。そんな名曲群に命の火を灯し続け、さらに多くの人の耳に届けたい、(バンドとしての)ジーノに初代ヴォーカリストとして参加していたマイケル・フレクシグの思いが、2019年『キーパー・オブ・ザ・フレイム』というアルバムとして結実した。
マイケルには、「ジーノの名曲をオリジナル・バージョンの本物のサウンドで聴いてもらいたい」という強い思いがあった。彼の手でコンパイルされた本作には、86年のデビュー・アルバム『Zeno』製作以前に行われた3回のセッションでレコーディングされた名曲たちの「初期ヴァージョン」が多数収録されている。
当時の意図を再現することを主眼とした本作においては、すべてオリジナルのミックスを保持。最適なサウンドとなるよう、控えめなマスタリングのみが施されている。当時数多くの巨大レーベルが驚愕し、桁外れのオファーをするきっかけとなったジーノの初期レコーディング。それが時を超え、21世紀に蘇ったのだ。
ここ日本とも強いつながりを持っていたジーノ。マイケル・フレクシグの手によって、名曲の数々に新たな命が吹き込まれたのは、ファンにとっても非常に喜ばしいこと。デビュー・アルバム製作に向けてジーノというバンドが最も乗りに乗っていた時期のドキュメントとも言える本作からは、彼らがアーティストとしてピュアに音楽に向き合う姿が浮き上がってくる。