2018年1月、ヘヴィメタル界に衝撃が走った。スレイヤーがフェアウェル・ツアーを行う、つまり現役引退することを表明したのだ。確かにその兆候は以前から見られた。首の手術を受け、激しいヘッドバンギングができなくなってしまったフロントマンのトム・アラヤは、引退をほのめかすこともあった。問題は首だけではない。デビュー以来トム・アラヤ、ケリー・キング、ジェフ・ハンネマン、デイヴ・ロンバードという鉄壁のカルテットを誇ってきたスレイヤーであったが、13年2月にデイヴが脱退。(もうこれで3度目のことであったが。)さらに同年5月2日には、ジェフがわずか49歳でこの世を去ってしまうという悲劇に見舞われたのだ。その後もエクソダスのゲイリー・ホルトらの手を借りて活動を続けてきたスレイヤーで。だが、ジェフもデイヴもいない彼らに割り切れなさを感じていたファンもいたかもしれない。それでも、だ。スレイヤー本人の口から「フェアウェル・ツアー」の言葉が出た衝撃は、半端なものではなかった。それはそうだろう。スラッシュ・メタルが誕生から、まもなく40年。これまで数多のバンドが生まれ、そして解散していった。だが、スラッシュ・メタル・バンドによる「引退宣言」なんて、これまで耳にしたことはなかった。ましてや40年間ずっとトップを走ってきたスレイヤーの引退宣言である。驚くなという方が無理な話だ。
フェアウェル・ツアーは18年5月、ラム・オブ・ゴッド、アンスラックス、ベヒーモス、テスタメントを従えた北米ツアーを皮切りにスタート。19年3月にはダウンロード・ジャパンにもやってきた。トムの最後のスピーチに、感極まったファンも多かったはずだ。