リッキー・ウォリック(ヴォーカル/ギター)、スコット・ゴーハム(ギター)、クリスチャン・マルトゥッチ(ギター)、ロビー・クレイン(ベース)、チャド・スゼリガー(ドラムス)という5人が名を連ねるブラック・スター・ライダーズ。その歴史は、シン・リジィを率いて数々の名曲を残したフィル・ライノットが他界してから10年が経った1996年に遡る。
ジョン・サイクス(ギター/ヴォーカル)、スコット・ゴーハム、ブライアン・ダウニー(ドラムス)、ダーレン・ワートン(キーボード)、さらにマルコ・メンドーサ(ベース)により再結成が実現したシン・リジィは、メンバーを入れ替えながら、ライヴ活動を精力的に実施。2009年に元ジ・オールマイティのリッキー・ウォリック(ヴォーカル/ギター)を迎え、オリジナル曲の制作を開始した彼らは、シン・リジィの名前でアルバムを制作することはないと公式に発表し、2012年にブラック・スター・ライダーズと改名する。
その後、ブライアン・ダウニーとダーレン・ワートンが脱退したため、リッキー、スコット、マルコ、元ブラザー・ケインのデイモン・ジョンソン(ギター)、元メガデスやY&Tのジミー・デグラッソ(ドラムス)という5人のメンバーでレコーディングに臨んだバンドは、アルバム『オール・ヘル・ブレイクス・ルース』(2013年)でデビューを果たす。フィルを彷彿とさせるリッキーの歌唱と・ヴォーカル・メロディ、スコットとデイモンのツイン・ギター、アイリッシュ・テイストの旋律など、シン・リジィの流れを汲んだこの作品が全英チャート最高25位にランク・インする。ザ・デッド・デイジーズに専念するために脱退したマルコに替わり、ヴィンス・ニール・バンドやラットなどでプレイしていたロビー・クレインを迎えたバンドは、2ndアルバム『キラー・インスティンクト』(2015年)をリリース。このアルバムを全英チャート最高13位に送り込むと、その勢いに乗り、同じメンバーで3rdアルバム『ヘヴィ・ファイア』(2017年)を発表し、この作品も全英チャート最高6位に入るヒットとなる。 アルバム・リリース後、ジミーが脱退したためブレイキング・ベンジャミンのチャド・スゼリガーを迎えてツアーを行なった彼らだが、ツアー終了後にデーモンが自身の活動に専念するために脱退。
新たにストーン・サワーのクリスチャン・マルトゥッチを迎えた新布陣でレコーディングを実施した末に完成したのが、2019年にリリースされた4thアルバム『アナザー・ステイト・オブ・グレイス』である。シン・リジィの哀愁やポップ性を受け継ぎつつ、このバンド独自のスタイルを追求した楽曲が充実し、フィル・ライノット風に歌うリッキーの歌唱も実に味わい深い。シン・リジィの魂を受け継ぎつつ、バンドとしての進化を取り入れたこの作品は、幅広い世代のロック・ファンを虜にすることは間違いない。