凄まじいスーパースター・エクストリーム・メタル・バンドが誕生した。その名もウルティマス。メンバーは、デイヴィッド・ヴィンセント、フロ・ムニエ、ルネ・エリクセンの3名。いずれもエクストリーム・メタル好きならば、聞き覚えのある名前だろう。現在Aura Noir、そしてEarth Electricのメンバーとして活躍しているルネは、94年~08年の長きに渡り、ブラスフィーマーの名で、かのメイヘムの屋台骨を支えたギタリスト。3枚のスタジオ・アルバムに携わるとともに、ここ日本へもやって来た経験を持つ。デイヴィッド・ヴィンセントは、言うまでもなくモ―ビッド・エンジェル黄金期、フロントマンとしてバンドを支えたデス・メタル界きってのヴォーカリストだ。フロについても説明不要だろうが、念のため、泣く子も黙るクリプトプシーの凄腕ドラマーである。
そんな凄すぎる3人が集まったウルティマスであるが、重要なのは、これがプロジェクトの類などではないということ。メイヘムを離れ早10年。そろそろ自らの新エクストリーム・メタル・バンドを始める時期だと思い立ったルネが、フロとデイヴィッドに声をかけ結成した歴としたニュー・バンド、それがウルティマスなのである!ルネとフロは、Nader Sadekのプロジェクトで、スタジオ、ステージ両方での共演経験を持っており、その相性の良さは実証済み。そこにエクストリーム・メタル界最強オーラを放つフロントマン、デイヴィッド・ヴィンセントが加わったわけであるから、期待するなという方が無理というものだ。
2019年3月にリリースされた、デビュー・アルバム、『サムシング・ウィキッド・マーチズ・イン』は、まさにその期待通り、いや、それ以上の仕上がりだ。ルネ特有のヒネくれたリフ、デイヴィッドの最強ヴォーカル、そしてフロの嵐のようなドラミング。まさに、メイヘム+モービッド・エンジェル+クリプトプシーといった趣のイーヴル・デス・メタルだ。特に、初期モービッド・エンジェルのファンにはドストライクであろう。デイヴィッドがヴォーカルを務めているわけだから、モ―ビッド・エンジェルを思い起こさせるのは当然だが、それだけではない。「デイヴィッドが歌うことを想定してリフを書いた」というルネは、オールドスクールなデス・メタル・マニアでもあり、その念頭に『Altars of Madness』や『Blessed are the Sick』、『Covenant』といった、初期モ―ビッド・エンジェルの名盤があったことは間違いない。
2024年3月には、セカンド・アルバム『Epic』をリリース。5年ぶりと、まさにファン待望のニュー・アルバムである本作について、ルネは「オールドスクールと現代の邂逅。俺たちが愛するエクストリーム・メタルに関するあらゆるグレートなことの共生。すべてがこのアルバムに詰まっている」と豪語する。ルネらしい不協和音を絡めたリフ、デイヴィッドの邪悪だが色気のあるヴォーカル、そしてフロの超人ドラミング。デス・メタル、そしてブラック・メタルというジャンルを作り上げてきたアーティストたちだけがたどり着ける境地。『Epic』は、まさに「ウルティマ」、すなわち究極のエクストリーム・メタル・アルバムの称号がふさわしい作品だ。